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『ピーター・グリーナウェイ レトロスペクティヴ』ピーター・グリーナウェイ監督 ストーリーの必要ない映画が出てきて欲しい【Director’s Interview Vol.389】

© BFI National Archive. Photo by Simon Archer

『ピーター・グリーナウェイ レトロスペクティヴ』ピーター・グリーナウェイ監督 ストーリーの必要ない映画が出てきて欲しい【Director’s Interview Vol.389】

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映画にとって最高の時期はサイレント時代



Q:あなたの映画に影響を受けた監督はたくさんいますが、逆にあなたはどんな映画や映画監督に影響を受けたのでしょうか?

 

グリーナウェイ:セルゲイ・エイゼンシュテインです。映画にとっての最高の時期は、サイレント時代の最後の10年間。もう随分前のことですよね。僕のヒーロー・エイゼンシュテインが最高の仕事をしていたのが、まさにその時期。『戦艦ポチョムキン』(1925)はその良い例ですね。『戦艦ポチョムキン』の音がついているバージョンは観ちゃダメですよ!オリジナルのサイレントのものを観てくださいね(笑)。


サイレントだったからこそ、皆映像を読み取ろうとしていましたが、トーキーになってからは、そういうことをしなくなった。映像を理解しようという行動がどんどん劣化したと思います。チャップリンも言っていましたよね。「映画に音を登場させたことが、映画にとって一番最悪な出来事だった」と。チャップリンは視覚的なユーモアを得意とする人だったから、トーキーの登場は自分のキャリアの助けにはならなかったのかもしれません。でも音がつく前の視覚的な映像の方が、画としてもより洗練されていたし、観る方も映像を読み取ることが出来た。改めてそう思います。そんなチャップリンはエイゼンシュテインの家を訪問し、プールで泳いだらしいです。二人は映画についての哲学的な話を繰り広げたそうですよ。



『英国式庭園殺人事件 4Kリマスター』Ⓒ1982 Peter Greenaway and British Film Institute.


また、ダスティン・ホフマン主演で『Lucca Mortis』という新作を今作っていますが、ハリウッドというマシンに全てが殺されてしまい商業主義に走る作品しか作れない。実験的な視点を持った映画は作られなくなってきていて、非常に残念だと思います。『バービー』(23)みたいな、どうでもいいような題材の映画を作っている場合じゃないんですけどね。






監督・脚本:ピーター・グリーナウェイ

1942年イギリスのウェールズ、ニューポート生まれ。幼少期はアートに関心を持ち、ヨハネス・フェルメール等の絵画に魅せられ、画家を志す。一方で、映画への興味も強く、イングマール・ベルイマンの『第七の封印』等に夢中になる。ロンドンのウォルサムストー美術学校で3年間学び、在学中に初の映像作品『Death of Sentiment(原題)』(62・未)を制作。卒業後は、COI(Central Office of Information)に就職、記録映画の編集を担当。マイケル・ナイマンとは短編『5 Postcards From Capital Cities(原題)』(67・未)で初めて仕事をする。COI退職後、BFI(British Film Institute)の支援で短篇『H・イズ・フォー・ハウス』(73)を制作。Hで始まる単語を並べる米の子供向け番組「セサミ・ストリート」のパロディが注目され、以来一風変わった個性的な短編を次々と発表する。80年に飛行機事故に遭った92人の事故後を記録した3時間余りのフェイクドキュメンタリー『ザ・フォールズ』で長編デビュー。82年に『英国式庭園殺人事件』を手掛け、その独特な構図と画角のなかで描かれる貴族の美しくも下品な表裏の世界を皮肉とユーモアを交えた独創的な内容が話題を呼び、その名を世界に広く知らしめた。88年に『数に溺れて』で第41回カンヌ国際映画祭芸術貢献賞を受賞、89年にジャンポール・ゴルチエが衣裳を担当した事で話題となった『コックと泥棒、その妻と愛人』で世界中を震撼させた。以降の作品に、日本の清少納言による随筆「枕草子」から着想を得た『ピーター・グリーナウェイの枕草子』(96)、レンブラントの「夜警」を題材にしたアート・ミステリー『レンブラントの夜警』(07)等がある。2014年に英国映画界への貢献を称えられ第67回英国アカデミー賞英国映画貢献賞を受賞。近年は、現代美術のアートディレクションを積極的に行っており、2017年にパリにあるルイ・ヴィトン財団の美術館フォンダシオン ルイ・ヴィトンにて行われた「近代美術のアイコン シチューキン・コレクション」展の映像作品、同年ミラノで行われた展示「Mortality Vitali」のディレクションを務めた。現在、ダスティン・ホフマンが主演するイタリアの都市ルッカを舞台にした新作映画「Lucca Mortis(仮題)」を準備中。



取材・文:香田史生

CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。





「ピーター・グリーナウェイ レトロスペクティヴ 美を患った魔術師」

3月2日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開

配給:JAIHO

© 1982 Peter Greenaway and British Film Institute

© 1985 Allarts Enterprises BV and British Film Institute.

© 1988 Allarts / Drowning by Numbers BV

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