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『コックと泥棒、その妻と愛人』悲劇か、喜劇か。オランダ絵画への偏愛から生まれた、美醜あふれる復讐絵巻

(c)Photofest / Getty Images

『コックと泥棒、その妻と愛人』悲劇か、喜劇か。オランダ絵画への偏愛から生まれた、美醜あふれる復讐絵巻

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いつ見ても衰えない挑発的な内容



 2019年11月、渋谷PARCOがリニューアルオープンした。同地での再開は3年ぶりだが、同社では50年目の第二章スタートという大きな位置付けのようだ。入るテナントも有名か無名かということではなく、個性的で面白いかどうかという視点でセレクトされており、かつての<最先端のカルチャーをリードする渋谷>が復活できるかどうか、注目されている。


 そのお膝元に、一風変わった小さな建物がある。今はライブハウスとアパレルが入っているが、その昔、1980年代以降に、小さな起爆剤となってPARCOと共に渋谷の人の流れを変えた先鋭的な映画館があった。シネマライズ。1986年に開館したミニシアターで、PARCOが閉館した3年前に同じく閉館し、30年の幕を閉じてしまったが、作品によっては都内で唯一、日本で唯一の上映館ということもあった単館上映館だった。


 それまでになかったような映画をかける映画館らしく、建築設計上のこだわりも強かった。アルミを鋳造成形したアルミダイキャストという素材でできたドレープカーテンで外観が覆われ(外観は現存)、内装の壁床はコンクリート打ちっ放しと鉄でできており、スクリーンは、舞台の幕が左右に開いた状態を模したシルバー色の大きなオブジェで囲われ、座席はフランス製という、機械的なインダストリアル感と西洋的ビンテージ感が融合した、唯一無二のデザインを持つ異質な映画館だった。



 開館後、館の個性と合う、厳選された作品たちが公開されていく。その中でも、大ヒットしてシネマライズのブランドづくりに大きく寄与したのが、87年に上映されたデヴィッド・リンチ監督『ブルーベルベット』や、89年上映のパーシー・アドロン監督『バグダッド・カフェ』、そして90年に上映された本作『コックと泥棒、その妻と愛人』であろう。特に本作は、独特の様式美やテーマが、館のコンセプトと非常に相性が良く、何か特別な映画体験を演出していたように思う。


 西洋の舞台劇のような構成、オープニングで幕が開き、エンディングで幕が閉じる演出、食欲や性欲、支配欲などをむき出しにした生々しい描写をシニカルに、しかし笑えるようにも描く挑発的な姿勢、シネマスコープの横長サイズと奥行きの動線を巧みに混ぜ、演劇と絵画と写真と映画をハイブリッドさせたような空間設計など、ハリウッド映画には無い、今見ても古びない、挑発的な作品なのだ。



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