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青春劇に込められたキューブリックへの熱烈なるリスペクトとは?『トレインスポッティング』

青春劇に込められたキューブリックへの熱烈なるリスペクトとは?『トレインスポッティング』

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90年代に颯爽と現れた “クール・ブリタニア”の先駆け



 本作の登場はあまりに鮮烈だった。まだ東京・渋谷がミニシアターの聖地と呼ばれていた頃、スペイン坂を登ったところにあるシネマライズ(2016年閉館)には本作を求める人たちの長蛇の列が伸び、熱気を帯びた場内でいざ上映が始まると、その一瞬一瞬から未体験カルチャーへいざなう魅惑の香りが伝わってきたものだった。 


 90年代、ブリティッシュ・ポップ・カルチャーが世界的に吹き荒らしたセンセーションは“クール・ブリタニア”とも呼ばれる。そこで映画部門のいわば切り込み隊長を担ったのが『トレインスポッティング』である。舞台はスコットランド、エディンバラ。定職に就かず仲間同士でたむろし、気がつけば一人また一人とドラッグによって陶酔の階段を駆け上り、それが覚めると今度は仕事も夢も未来もない現実が一気に押し寄せてくる。これはそんな状況を生き抜く若者たちの青春をスピード感たっぷりに描き出した傑作である。 


 単刀直入に言って、本作には三つの驚きがあった。一つはタイトル。「電車おたく」などとも訳される言葉だが、筋書きには電車にまつわるものなど出てこない。けれど観る者はなぜかこの不可思議な響きに魅せられて、意味深な呪文を体得したかのようにその言葉を口にせずにいられなくなってしまう(その意味合いは2017年公開の続編で明確化している)。 


 二つ目はドラッグというテーマを真正面から描いているということ。映画というメディアでは危険な題材を曖昧にしたり、軽く匂わす程度にとどめておくのが無難と言われるが、本作ではかなり大胆にタブーへと切り込み、それでいて決してドラッグを礼賛するようなことはしていない。かといって「道徳的な正しさ」を追い求めているわけでもなく、そこにはこれまでとは全く異なった、新たな価値観を持った90年代を疾走する若者の姿が描かれていた。 


 そして三つ目には、音楽、ファッション、演技、文学、デザインなど様々な要素を掛け合わせ、映画の中で次々と化学反応を呼び起こしていったことが挙げられる。特にイギー・ポップの” Lust for Life”やアンダーワールドの” Born Slippy”が流れる中で主人公のモノローグが重なり合い、そこにデザイン集団TOMATOによるタイトルバックが融合していく様には、映画を体験した者にしかわからない何とも言えない陶酔感があった。



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