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『シャイニング』完全主義者キューブリックの演出に隠された裏テーマとは
『シャイニング』あらすじ
ジャック・ニコルソン演じるジャック・トランスは、妻(シェリー・デュバル)と息子(ダニー・ロイド)と共に優雅なオーバールック・ホテルを冬季管理人として訪れたことから物語は始まる。トランスはこのホテルを訪れたことはないはずなのだが ― 果たして?その答えは、狂気と殺戮が渦巻くこの場所にある。。
Index
- 「シャイニング」の由来と、「展望ホテル」に隠された意味
- キューブリックのシンメトリー構図とステディカム映像のダイナミズム
- テイクを重ねて引き出す極限の演技
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「業」と「輪廻」の裏テーマが永遠の魅力を吹き込む ※映画のラストに触れています。
「シャイニング」の由来と、「展望ホテル」に隠された意味
『2001年宇宙の旅』(1968)、『時計じかけのオレンジ』(1971)ですでに名声を確立していたスタンリー・キューブリック監督が、『バリー・リンドン』(1975)の後に選んだ題材は、ホラー作家スティーヴン・キングが1977年に発表した3作目の小説『シャイニング』だった。
「シャイニング」は登場人物2人(子供のダニーと、ホテルの料理長のハロラン)が持つ超能力を指し、具体的には予知とテレパシーの能力として描かれる。キングはジョン・レノンが1970年に発表したシングル曲『インスタント・カーマ』のサビ冒頭の歌詞「Well we all shine on」にインスパイアされ、この超能力の名称と題名を決めた。カーマ(karma、カルマ)とは仏教などインドの思想における「業(ごう)」のことで、「因果応報」に通じる概念。輪廻思想とも結びつけられる考え方だ。
『インスタント・カーマ』
物語の舞台はオーバールック・ホテル(Overlook Hotel)。Blu-ray版の字幕では「展望ホテル」となっているが、overlookには「見下ろす、見晴らす」のほかに、「監視する」や「邪悪な目でにらんで魔法にかける」といった意味も含む。そんな英語のニュアンスを含むオーバールックという言葉は、建物自体が意思を持つかのようなホテルにふさわしい、不穏な予兆をはらむ秀逸なネーミングだ。