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  4. 『フルメタル・ジャケット』キューブリックが描いてきた幼児性と狂気の関係※注!ネタバレ含みます。
『フルメタル・ジャケット』キューブリックが描いてきた幼児性と狂気の関係※注!ネタバレ含みます。

『フルメタル・ジャケット』キューブリックが描いてきた幼児性と狂気の関係※注!ネタバレ含みます。

Index


※本文中では原作者・制作者の意図を尊重し、セリフなどはオリジナルのまま掲載させて頂いております。


幻の結末。主人公は死ぬはずだった



 ベトナム戦争に材を取ったスタンリー・キューブリックの『フルメタル・ジャケット』(1987)は前半の新兵訓練シークエンスと後半のベトナムでのシークエンスという分断された2部構成をとっている。


 前半は新兵のパイル(ビンセント・ドノフリオ)が教官の「しごき」によって狂気へと滑り落ちる様が描かれ、後半は二等兵ジョーカー(マシュー・モディーン)がベトナムの戦場で目撃する地獄が描かれる。


 実は、撮影開始前の脚本では、主人公のジョーカーは最後に死ぬことになっていた。それはキューブリックのアイデアだったが、共同で脚本を執筆したマイケル・ハーは反対した(ハーは『 地獄の黙示録』の主人公のナレーションを書き、それが縁で作品への参加を懇請された)。キューブリックとハーは作品の結末について、相当な期間議論したという。そして完成した作品ではジョーカーの死は描かれなかった。なぜキューブリックは主人公を殺そうとし、最終的にそれを断念したのか?


兵士になるための訓練とは子供へと戻ること



 『フルメタル・ジャケット』は、青年たちを一度去勢して無垢な子どもに戻すことで死を恐れない狂気を実装させる過程を描いている。そのため、前半の訓練シーンでは、鬼教官のハートマン軍曹によってジョーカーたち新兵は繰り返し去勢の暗喩によってしごかれる。


「お嬢様方!」

「ふざけるな!大声出せ!!タマ落としたか!」

(映画:フルメタル・ジャケット、セリフ/字幕よりママ引用)




 さらに訓練についてこられないパイルは赤ん坊の格好までさせられ、幼児性を強制的に付与される。新兵たちは、訓練の過程で徹底的に去勢され、女性への性欲も抑圧されていく。そんな時に彼らに与えられるものこそが銃だ。銃と一緒に眠りにつき、銃を女性の名前で呼んで可愛がれと教え込まれる。一度去勢され、今度は銃に欲情する殺人マシーンとして教育されるのだ。しかし、一度幼児へと退行した彼らの精神は簡単には大人へと戻ることはできない。大人としての「成熟」を奪われた彼らは暴力的な幼児としてベトナムの戦場へと送り込まれる。



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