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キューブリックの実験室「言葉による人間の改造」は如何にして行われるのか?『フルメタル・ジャケット』※注!ネタバレ含みます。

キューブリックの実験室「言葉による人間の改造」は如何にして行われるのか?『フルメタル・ジャケット』※注!ネタバレ含みます。

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※本文中では原作者・制作者の意図を尊重し、セリフなどはオリジナルのまま掲載させて頂いております。 


名優R・リー・アーメイ、死す



 去る4月15日、米の俳優R・リー・アーメイが亡くなった。享年74。彼の名を映画史に刻んだ一作こそ『フルメタル・ジャケット』(1987)だろう。アーメイは本作で新兵を訓練しベトナム戦争に送り込む鬼教官・ハートマン軍曹を演じ、その群を抜いた(時に詩的な!)罵詈雑言で映画ファンの脳裡に永遠に刻まれている。


 『フルメタル・ジャケット』は監督スタンリー・キューブリックによるベトナム戦争を舞台にした作品だが、1980年代に量産された「ベトナムもの」とは明らかに一線を画している。ドラマ性を排除し、まるで実験室に閉じ込めた人間を冷徹に観察するかのような演出は、軍隊という究極の暴力装置の本質をレポートする研究者のような筆致だ。以上のような印象を与える最大の要因は映画の前半、1時間をかけて描かれる新兵の訓練だ。このシークエンスはキューブリックの制作(実験)意図を明確に表している。


『フルメタル・ジャケット』とは何のことなのか?



 『フルメタル・ジャケット』の原作は『ショートタイマーズ』という小説だ。「短期応召兵」という軍隊用語で1年と少しの「短めの兵役」を課せられた兵士を指す言葉だ。しかしキューブリックはこのタイトルが「パートタイムで働く人」を想像させるため気に食わず、制作当初から違うタイトル案を探していた。




 そんなある日、彼は銃のカタログの中から「フルメタル・ジャケット」という言葉を見つける。銃弾の弾頭には通常鉛が使用されるが、その鉛をすっぽりと包み込む銅製の鞘を指す言葉だ。キューブリックはこの言葉の響きを即座に気に入りタイトルに採用した。金属の覆いで補強された弾丸は、無垢な若者たちを殺戮マシーンに改造することを暗喩するものとしても、これ以上ないと思えたからだ。


 『フルメタル・ジャケット』のテーマは人間の改造だ。そしてキューブリックは「言葉によって人間は改造できる」と主張した。その仮説を実証するための最高の素材、R・リー・アーメイを手に入れ、実験は開始されたのだ。



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