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  4. 『フルメタル・ジャケット』キューブリックの実験室「言葉による人間の改造」は如何にして行われるのか? ※注!ネタバレ含みます。
『フルメタル・ジャケット』キューブリックの実験室「言葉による人間の改造」は如何にして行われるのか? ※注!ネタバレ含みます。

『フルメタル・ジャケット』キューブリックの実験室「言葉による人間の改造」は如何にして行われるのか? ※注!ネタバレ含みます。


「口でクソたれる前と後に“サー”と言え!」



 映画の冒頭、マシュー・モディーン演じる新兵とその仲間たちはハートマン教官からこう宣言される。


 「俺はキビしいが公平だ。人種差別は許さん。黒豚、ユダ豚、イタ豚をおれは、俺は見下さん。すべて平等に価値がない!」(映画:フルメタル・ジャケット、セリフ/字幕よりママ引用)


 戦争で使い物になる兵士の条件とは何だろうか。それは勇猛さでもなく、卓抜した殺しの技術でもない。「個性」がないことだ。一つの無個性な駒として命令に従い、卓越した動きなどしない均一化された集団は軍隊として理想的な働きをする。その為に、ハートマン軍曹は言葉によって彼らの個性を剥ぎ取ろうとする。


 「口でクソたれる前と後に“サー”と言え!分かったかウジ虫!」「パパの精液がシーツのシミになり、ママの割れ目に残ったカスがおまえだ! どこの穴で育った?」 (映画:フルメタル・ジャケット、セリフ/字幕よりママ引用)




 惚れ惚れする罵詈讒謗を吐き出すハートマン役は当初、R・リー・アーメイではなく別の役者が演じるはずだった。アーメイは元海兵隊という経歴を買われ、テクニカルアドバイザーとして様々な戦争映画の製作に参加していた。「フルメタル・ジャケット」の現場でもアドバイザーだったが、その暴言の素晴らしさにキューブリックが惚れ込み、ハートマン役に抜擢したのだ。


 「R・リー・アーメイは侮辱のセリフを150ページ分くらい用意して現場に現れたんだ。突拍子もないやつをね。例えば、『ロレンスなんて名前は好きじゃないね。ロレンスなんておカマか水兵の名だ』とかね。」


 さらにアーメイは本番中に罵倒するセリフを忘れた時にはこんなアドリブで埋め合わせた。「カマを掘るだけ掘って、相手のマスかき手伝う外交儀礼もないやつ」(映画:フルメタル・ジャケット、セリフ/字幕よりママ引用)


 このセリフを聴いた脚本家のマイケル・ハーは心底感動したという。「まったく信じがたい、素晴らしいセリフだ・・・実に真実で、本当におかしくて、素晴らしい言い回しで、しかも当を得ている。」


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