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『シャイニング』完全主義者キューブリックの演出に隠された裏テーマとは

(c)2007 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved.

『シャイニング』完全主義者キューブリックの演出に隠された裏テーマとは

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テイクを重ねて引き出す極限の演技



 キューブリックは納得のいく演技とカメラワークが得られるまで延々とテイクを繰り返す。『シャイニング』の撮影現場でも数十回のリテイクは当たり前で、ときには百数十回に及ぶこともあった。


 『カッコーの巣の上で』(1975)でアカデミー主演男優賞を受賞した名優ジャック・ニコルソンが相手でも、妥協のない姿勢は揺るがない。撮影期間は当初の予定よりも大幅に延び、ほぼ順撮りで進められた撮影が終盤に差しかかる頃にはニコルソンの疲労も蓄積されていった。ジャックが正気を失い妻子を追い回す場面では、ニコルソンの心身の消耗が演技に一層の真実味を加えることになる。


 ウェンディ役のシェリー・デュヴァルに対し、キューブリックは愚痴を言ったり叱ったりしてプレッシャーを与え続ける。彼女を本当に神経質にすることが狙いだった。デュヴァルはドキュメンタリーの中で当時を振り返り、「(監督と衝突して)実際に怒るから気分も高揚し、集中できる。自分の中から今までと違うものも引き出せるようになっていくし、彼もそれが分かっていた」と語っている(※参考文献1)。



『シャイニング』(c)2007 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved.


 69歳でハロランを演じたスキャットマン・クローザースは、延々とリテイクするキューブリックのやり方に参ってしまう。キッチンでダニーとシャイニングの話をするシーンのあるショットは148テイクに及んだ。ハロランがジャックに斧で切りつけられ床に倒れるシーンは、40テイクを重ねたところで、見かねたニコルソンがキューブリックにこれ以上続けないでくれと頼んだという。老体を酷使したクローザースは撮影終了後、リハビリのため病院に通うことになった。



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