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完全主義者キューブリックの演出に隠された裏テーマとは『シャイニング』

完全主義者キューブリックの演出に隠された裏テーマとは『シャイニング』


キューブリックのシンメトリー構図とステディカム映像のダイナミズム



 キューブリックはシンメトリー(左右対称)の構図を好んで使う映像作家だが、映画『シャイニング』(1980)のホテル内部のショットにもシンメトリーが頻出する。ジャック・ニコルソン演じるジャックが書斎代わりにする大広間、廊下と幾何学模様のカーペット、ジャックが全裸の女性の亡霊を見る237号室などなど。シンメトリーは均整のとれた美しさを感じさせると同時に、静的な完全さが「死」をイメージさせもする。



 ホテルには2つの「迷路」がある。ひとつは庭の生垣でできた巨大な迷路。もうひとつは廊下が折れ曲がって延々と続くホテルの内部構造そのものだ。迷路は、人間を誘い込み、迷わせ、とらえようとする存在の象徴でもある。


 原作小説では、ホテルの庭には動物の形に刈り込まれた植木があり、これが終盤で動き出してダニーと母ウェンディを襲う。当時の視覚効果でこれを再現するのは無理だと感じたキューブリックは、代わりに生垣の迷路でのチェイスシーンを考え出した。


 キューブリックのビジョンの具現化に大きく貢献したのが、1970年代にカメラ技術者のギャレット・ブラウンが開発したステディカム(カメラ安定支持機材)だ。ブラウンがこの機材で撮影したデモ映像に興味を持ったキューブリックは、77年にブラウン本人に会い、その際に当時最新型のステディカムを見て導入を決める。ステディカムの能力を確かめたうえで、廊下や階段を通じて部屋から部屋へスムーズに移動できるホテルのセット設計を指示。ブラウンもステディカムのオペレーターとして撮影に参加することになった。ブラウンはさらに、廊下を三輪車で走るダニーを低いアングルで追いかけられるよう、改造した車椅子に座ってステディカムを操作する方法も考案した。




 こうして、先述のダニーが廊下を三輪車で走るシーンをはじめ、大広間の階段でバットを振り回すウェンディをジャックが追う場面や、斧を持ったジャックが妻子の隠れた寝室とバスルームに迫る場面、雪が積もった生垣の迷路の中を逃げるダニーと追うジャックのシークエンスなど、ステディカムを活用したスムーズな移動ショットが『シャイニング』を特徴づけることになった。


 静謐な死の気配を漂わせるホテルの中へ、あるときは滑らかに、あるときは緊迫感を伴って入り込んでいく映像は、邪悪な存在に取り込まれていくジャックたち家族の精神状態を観客に体感させる効果もある。



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