『ポンヌフの恋人』あらすじ
フランス革命200年祭でにぎわうパリ。セーヌ川にかかるポンヌフ橋をねぐらにする孤独な大道芸人アレックスと、眼病で失明の危機にある画学生ミシェルとの鮮烈な恋を描いた美しく痛ましい愛の物語。
Index
ミニシアターブームを牽引
シネコンが登場する前の1980年台後半。〝映画館が監督を育てる〟ことを標榜したミニシアターが都内を中心に数多く生まれ、評価と数字を地道に積み重ねていった。作家の多様性を尊重しようと様々な試行錯誤が実を結び、遂に一本の映画が記録的な大ヒットを実現する。渋谷のシネマライズで、27週上映を達成したフランス映画『ポンヌフの恋人』(91)である。
監督の名前はレオス・カラックス。『ボーイミーツガール』(84)で監督デビュー。当時23歳の監督が、パリの街と若者の姿を幻想的にモノクロームでおさめたフィルムは批評家たちに絶賛され、続く『汚れた血』(86)は一転、原色と闇を大胆に使い、エイズに侵された近未来のパリを人工的な世界観で描き、人気も評価も確立した。
『ポンヌフの恋人』(C)1991 STUDIOCANAL-France 2 Cine'ma
その後に発表された本作は、高まる期待に応え、本国フランスでは2週間で14万人も動員する大ヒットを記録。その余波に加え、カラックスの名を数年かけて浸透させてきた配給会社の努力もあり、日本でも特大ヒットにつながった。
本国でのヒットは、内容のユニークさあっての上だが、他にもいくつかの理由があった。一つは、カラックスの優れた作家性によって次作を待ち望んでいるファンが数多くいたこと。次は、監督の当時の恋人でもあり、『汚れた血』に引き続き主演するジュリエット・ビノシュが『存在の耐えられない軽さ』(88)で世界的俳優になっていたというニュース性。そしてもう一つが、度重なるトラブルによって制作に3年もかかり、何度も中断しては撮影するという難産が、全仏マスコミで話題になり、ゴシップのようになっていたからであった。