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『12日の殺人』ドミニク・モル監督 刑事の地味な日常から描き出す未解決事件【Director’s Interview Vol.391】

© 2022 - Haut et Court - Versus Production - Auvergne-Rhône-Alpes Cinéma

『12日の殺人』ドミニク・モル監督 刑事の地味な日常から描き出す未解決事件【Director’s Interview Vol.391】

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映画作りは全てが重要



Q:ヨアンは独身のようですが、設定に意図したものがあれば教えてください。


モル:ヨアンが独身なのは、自らがそのように選択したという設定です。職種上、家庭と仕事の両立は出来ないと彼は考えている。家族と一緒に行動したくても、事件が起こるとそっちを優先しなくてはならない。実際に離婚率も高いそうです。相棒のマルソーはその例となっていて、彼は離婚の危機を迎えています。ヨアンは自分の仕事に全てを懸けたいと考えていて、家族関係を築くことに費やす時間やエネルギーは無いと思っているのです。


Q:食堂でヨアンとクララの友人ナニーが話すシーンが素晴らしかったです、会話の内容はもちろんのこと、二人それぞれのショットでカット割が構成され、最後のカットで初めて二人が向き合う“引き”のショットになる。編集も冴え渡っていました。


モル:そこは大好きなシーンなので、言及してもらえて嬉しいです。あのシーンは実は違う場所で撮影する予定でした。ナニーのバイト先であるパン工場を出たところで撮影しようと思っていたのですが、カメラマンと撮影について話していた時に、突然「ここじゃない」と感じたんです。工場の従業員が行き交うような多くのノイズが聞こえる場所で、重要な会話をするのは違うのではないかと。それで、以前ロケハンで見つけていた食堂に撮影場所を変更しました。パースの感じが良かったし、テーブルもたくさん並んでいて、カメラが引いたときもインパクトのある画が撮れる。そして最も大事だったのは、あの大きな空間の中では彼らがすごく小さな存在に見えることでした。まるで彼らが迷子になっているかのように見えて、広大な空間の中で自分の居場所が分からない二人のようにも見えるんです。



『12日の殺人』© 2022 - Haut et Court - Versus Production - Auvergne-Rhône-Alpes Cinéma


最近のテレビシリーズに多く見られるのですが、私は無駄にカットバックする編集が嫌いなんです。一つのカットでそれぞれの役者さんとしっかり時間を過ごすべきだし、そこから醸し出される感情をしっかりと捉えることが重要。そういった最大のアドバンテージを得られるようなリズムにそって編集しました。


Q:本作『12日の殺人』も類稀なる傑作に仕上がっていますが、その勝因はどこにあると思いますか。


モル:勝因は全てですね。映画作りは全てが重要なんです。脚本が素晴らしくても撮影や編集が良くなければダメだし、その逆も然り。キャスト・スタッフなど関わっている全ての方にベストを尽くしてもらうことも大切です。映画監督としての大事な仕事の一つは、関わっている全員のベストを引き出すこと。それが良質な映画に導いてくれる。そしてそれこそが、映画作りの醍醐味でもあるんです。



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監督/脚本:ドミニク・モル

1962 年ドイツ・ビュール出身、フランスの映画監督・脚本家。 『ハリー、見知らぬ友人』(2000)、『レミング』(2005)はカンヌ国際映画祭パルム・ドール候補に。『ハリー、見知らぬ友人』は、2001 年セザール賞で最優秀主演男優賞、最優秀監督賞、最優秀編集賞など数々の賞を受賞。2019年の第32回東京国際映画祭コンペティション部門では、最優秀女優賞と観客賞を受賞したサスペンス映画『悪なき殺人』(映画祭上映時タイトルは「動物だけが知っている」)がある。



取材・文: 香田史生

CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。




『12日の殺人』

3月15日(金)新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国ロードショー

配給:STAR CHANNEL MOVIES

© 2022 - Haut et Court - Versus Production - Auvergne-Rhône-Alpes Cinéma

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