第二部:『春画先生』『春の画 SHUNGA』をどう撮ったのか?
トークイベント第二部では、『春画先生』と『春の画 SHUNGA』の撮影について2人が語り合った。『春の画SHUNGA』を見て芦澤さんが感じたというのが「聞き出しの上手さ」を。春画というセンシティブな題材を扱うだけに「(被写体が)普段なら言いづらいことを話しているけど、すごくスムーズに普通の話をする延長のように話していて、そういう空気をつくり出しているのを強く感じました」と、映画を通じて現場に“話しやすい”空気感が醸し出されているのを感じたと語る。
さらに、過去に感銘を受けた先述の「オーディション」と同様の山崎さんらしさを感じたというシーンとして横尾忠則氏が登場する場面について言及。「横尾さんが、ちょっとここでは言えないようなことをおっしゃっている(笑)、魅力的なシーンなんですが、外の樹木が風に揺らいでいる中で、緑と横尾さんの顔が一体化していて、そこですごく大胆な発言をされているんです。やっぱり山崎さんだなと思いました。そこで普通ならもうちょっと横尾さんの顔を見たいと思うけど、余計なライトを当てずに我慢して撮られていて、山崎さんのドキュメンタリー魂を感じた大好きなシーンです」と惜しみない称賛を送っていた。
一方、山崎さんは『春画先生』について「春画から始まって、塩田ワールドへと一直線に入っていった感じで、カメラの置き方で、最初のうちは春画を意識してるような、半分見えないように見えにくくしているようなところがあるけど、映画が進むにしたがって、それがなくなっていく」と芦澤さんによるカメラの意図について指摘。芦澤さんは「春画が入口でありテーマですが、だんだんと生身の人間に春画的なものを感じてもらいたいと思った」と“春画”から“人間”へと観客の意識を誘うような視点を意識したと明かした。
また山崎さんは、春画をカメラに収める中で「春画の世界の中にいる男と女がすごくおおらかで優しくて自由なのをものすごく感じました。巨大な陰茎などが話題になるけど、それよりも男と女の表情――やはり絵師たちは人間を描こうとしていると感じました。江戸時代の性に対する意識の豊かさ、自由さを感じたし、歌麿の男女の関係の構図は、まさに映画カメラマンも勉強したほうがいいなと思います。表情を見せないで表現しているところがすごくて、カメラマンとしての刺激を受けました」と語った。