受け継がれる「ロスト・ワールド」のDNA
1925年の映画『 ロスト・ワールド』はドイルの「失われた世界」を元にしている。こちらもラストのプテラノドンはやはり別の恐竜(この作品ではブロントサウルス)に置き換えられ、さらにこれが街で大暴れ。恐竜はウィリス・オブライエンによる見事なストップモーション・アニメーションで動き、彼はこのあと1933年の『 キング・コング』でも才能を発揮し、特殊効果の礎を築く。恐竜は巨大なコングに置き換えられるが、恐竜の生き残る秘境への探検、先住民との遭遇、そして文明世界に連れて来られたコングの暴走など、『ロスト・ワールド』との共通点は多い。
スティーブン・スピルバーグによる『ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク』は、「失われた世界」から続くこの系譜に連なっており、それぞれの特徴を生かしながら新しい時代の作品へと進化させている。スクリーンに恐竜を復活させたCG技術は、そのまま劇中で恐竜を復活させたクローン技術と重なるようだ。CGで描かれようと、ストップモーションで描かれようと、あるいは小説として書かれようと、そのベースには未知の世界や恐竜への憧れという、つねに変わらない好奇心や探究心が満ち溢れているのだ。
『ジュラシック・パーク』シリーズにおいて「失われた世界」とは単にかつて恐竜が生きた世界のことだけではない。崩壊し、閉鎖されたテーマパークそのものも、「失われた世界」だ。最新作『ジュラシック・ワールド/炎の王国』は『ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク』同様、テーマパーク崩壊後の島が舞台である。そこにもやはり、「失われた世界」の遺伝子が流れているかもしれない。
イラスト・文:川原瑞丸
1991年生まれ。イラストレーター。雑誌や書籍の装画・挿絵のほかに映画や本のイラストコラムなど。
「SPUR」(集英社)で新作映画レビュー連載中。