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『スリープ』ユ・ジェソン監督 3人目の主人公は「結婚」そのもの 【Director’s Interview Vol.416】
3人目の主人公は「結婚」
Q:すると、監督とパートナーの具体的な経験も反映されているのでしょうか?
ジェソン:そうですね、もちろん後半の激しい展開はフィクションですが(笑)。実は、私は睡眠時無呼吸症候群を患っているので、大きないびきをかきますし、眠りながら息をしていない瞬間があるわけです。妻はそれに気づくと、私が再び息をするまでじっと見ていてくれるそうなんですね。その事実を知ったときは本当に驚いて、すっかり眠れなくなってしまいましたが、幸い私は誰かに甚大な被害を与えてはいません。けれど、もしも彼女に物理的な被害を与えるようなことがあったら……そんなふうに考えたこともアイデアを膨らませていくきっかけでした。
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Q:作品を観ながら、「睡眠障害やメンタルヘルスなどの現代の問題に対し、結婚や家族という旧来のシステムはどこまで有効か?」という社会的テーマを感じましたが、ご自身のパーソナルな問題でもあったのですね。
ジェソン:そもそも私の人生において、「結婚」は大きなテーマのひとつだったんです。しかし、映画や小説などによく見られるのは、夫婦間に葛藤や問題が生じるパターン。大喧嘩をしたり、どちらか一方が取り返しのつかない過ちを犯してしまったりと、当事者同士の問題を描くことが多いですよね。しかし、私は結婚を控えながらこの映画を作っていたので、結婚に対してどこかロマンティックな気分があったんです(笑)。結婚する2人は互いに愛し合い、信頼し合っている、そして親友のような関係でもあると考えていました。そんな夫婦に外部から問題を投げかけ、2人が問題を克服する過程を見せたかったんです。
つまり私にとって、3人目の主人公は「結婚」そのものだと言えます。外的な危機が訪れたとき、結婚生活や夫婦関係は維持されるのか、それとも壊れてしまうのかを描こうとしたわけですから。そして、スジンとヒョンスは韓国のアパートに暮らす中産階級の夫婦なので、そこには必然的に韓国社会の抱える問題が表れてきます。スジンは出産を控え、子どもを産みますが、妊娠中の女性や母親のメンタルヘルスを描くことも重要なポイントのひとつでした。