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『スリープ』ユ・ジェソン監督 3人目の主人公は「結婚」そのもの 【Director’s Interview Vol.416】

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『スリープ』ユ・ジェソン監督 3人目の主人公は「結婚」そのもの 【Director’s Interview Vol.416】

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ポン・ジュノから学んだもの



Q:娯楽性と社会性のバランスを含め、やはりご自身の映画製作はポン・ジュノ監督から学んだことが多いのでしょうか。


ジェソン:ポン・ジュノさんから学んだことは非常に多いですね。私は専門的な映画教育を受けていないので、『オクジャ/okja』(17)の現場で働きながら学んだものが自分にとってはすべてでした。プリプロダクションから撮影、ポストプロダクション、プロモーションまで2年半ほど監督の近くにいたので、非常に価値ある経験ができましたね。しかし、当時は「とにかく現場でミスをしてはいけない、自分が作品を台無しにしてはいけない」ということばかり考えていて、「何かを学んでやろう」とか「なるほど、これはこういう教えだな」などという気分では一切なかったんです。



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ところが、いざ映画を作りはじめると、意識しているかいないかにかかわらず、自分がポン・ジュノさんの真似をしていることに気づきました。私は、映画監督はみな彼のようにストーリーボードを自分で全編描いてから撮影に臨むと思っていたので(笑)、『スリープ』も脚本を書いたあと、出資も決まらないうちからストーリーボードを描いていたんです。そして、描いた通りに撮影を進める計画でした。しかし、撮影を始めると周囲のスタッフや役者さんに心配されたんです(笑)。「編集段階で後悔するんじゃないか、別の撮り方もしたほうがいいだろう」と。確かに、ポン・ジュノ監督はストーリーボード通りに映画を作り上げられるほどのビジョンを持った天才ですが、私は宝くじに当たった一般人のようなもの(笑)。無謀なことをせず、余裕をもって、安全に撮影を進めるべきだと学びました。


その一方で、ポン・ジュノ監督から得た大きな学びのひとつは、「自分自身で作品の細部までディレクションをしなければならないのだ」ということでした。『オクジャ/okja』では音響のディレクションについて、鳥の鳴き声ひとつとっても、音がどこから聞こえるのか、どんな種類の鳥が鳴くのかまでこだわられていましたし、バイクや車が通り過ぎる場面は車種や音のパターンまで指示を出されていたんです。「ここまでやるのか」と驚きましたが、やはり監督たるもの、どのような場面であれ、そこまで細部を詰められるようにならねばならない。『スリープ』ではできるかぎりそうするよう努力しましたし、今後もそうありたいと考えています。




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監督/脚本:ユ・ジェソン

1989年10月25日生まれ。大学入学後、映画・創作に目覚めたユ・ジェソンは、兵役を終えてから本格的に映画製作に没頭していく。在学中に『シークレット・ミッション』(13)に助監督として参加。翌年に制作した短編映画『VIDEO MESSAGE(英題)』(14)は、第41回ソウル・インディペンデント映画祭と第20回インディフォーラム映画祭のコンペティション部門で上映された。大学卒業後、ポン・ジュノ監督がブラッド・ピットの映画製作会社プランBとタッグを組んで手がけた韓・米合作のNetflix映画『オクジャ/okja』(17)にも助監督として参加。『神と共に 第一章:罪と罰』(17)ではサウンド・コーディネーターも経験し、翌年にはイ・チャンドン監督『バーニング 劇場版』(18)で英語字幕の翻訳制作を務めた。同年に手掛けた短編映画『THE FAVOR(英題)』(18)は、第22回富川国際ファンタスティック映画祭でファンタスティック短編映画賞を獲得。名監督の元で培った多様なキャリアを活かして、満を持しての長編監督デビューとなった本作は、第76回カンヌ国際映画祭批評家週間での選出をはじめ、国内外での映画祭で称賛を集めており、今後の監督キャリアに注目が集まる新人監督とされている。



取材・文:稲垣貴俊

ライター/編集者。主に海外作品を中心に、映画評論・コラム・インタビューなどを幅広く執筆するほか、ウェブメディアの編集者としても活動。映画パンフレット・雑誌・書籍・ウェブ媒体などに寄稿多数。国内舞台作品のリサーチやコンサルティングも務める。





『スリープ』

6月28日(金)よりシネマート新宿ほか全国公開

配給:クロックワークス

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