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『お母さんが一緒』橋口亮輔監督 リハーサルの雑談から生まれるものとは 【Director’s Interview Vol.420】

『お母さんが一緒』橋口亮輔監督 リハーサルの雑談から生まれるものとは 【Director’s Interview Vol.420】

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恋人たち』(15)以来、橋口亮輔監督9年ぶりの新作は、連続シリーズとして作られたドラマを再編集した映画『お母さんが一緒』。ペヤンヌマキが手がけた同名舞台が原作のこの作品、元々はCS「ホームドラマチャンネル」(松竹ブロードキャスティング)の開局 25周年ドラマとして制作されたが、当初から映画化も想定されていたという。


江口のりこ、内田慈、古川琴音という実力派に加え、演技初体験のお笑い芸人・青山フォール勝ち(ネルソンズ)で臨むのは、笑って泣ける家族ドラマ。人間の可笑しさや哀しさ、生きづらさを描き続けてきた橋口監督ならではの内容だが、軽やかなタッチは新境地を感じさせる。橋口監督はいかにして『お母さんが一緒』を作り上げたのか。話を伺った。



『お母さんが一緒』あらすじ

親孝行のつもりで母親を温泉旅行に連れてきた三姉妹。長女・弥生(江口のりこ)は美人姉妹といわれる妹たちにコンプレックスを持ち、次女・愛美(内田慈)は優等生の長女と比べられてきたせいで自分の能力を発揮できなかったと心の底で恨んでいる。そんな二人を冷めた目で観察する三女・清美(古川琴音)。三姉妹に共通しているのは、「母親みたいな人生を送りたくない」ということ。母親の誕生日をお祝いしようと、三姉妹は夕食の席で花やケーキを準備していた。母親へのプレゼントとして長女の弥生は高価なストールを、次女の愛美は得意の歌を用意し、三女・清美は姉たちにも内緒にしていた彼氏・タカヒロ(青山フォール勝ち)との結婚をサプライズで発表すべくタカヒロ本人を紹介するつもりだったが――。



今回は動画版インタビューも公開! あわせてお楽しみください!




Index


映画化を念頭にドラマを撮る



Q:元々は連続ドラマとして作られた作品ですが、映画になることも念頭に置かれていたのでしょうか。


橋口:もちろんです。深夜の30分枠のドラマというのは大体2日で撮るんです。僕はやったことがあるので予算規模も分かりますが、あの感じのドラマが2時間続くと思ってください。深夜にパッと見る分にはいいかもしれませんが、あのクオリティで2時間はちょっと難しいですよね。配信の連続ドラマでも楽しめて、なおかつ1本に繋げたときに映画としての質が落ちないよう、色々と考えていました。


Q: 30分×5本のドラマを再編集して1本の映画にする作業はいかがでしたか。


橋口:ドラマ版の方が多少スピードが早いと思いますね。今回の編集は『ゴジラ-1.0』(23)をやっている宮島竜治さんにお願いしました。いつもは自分で編集をしているので、初めてお任せした形になりましたが、宮島さんはとてもスピーディーな編集をなさるんです。『ゴジラ』を観ていただければ分かりますが、ものすごく軽快でスピーディー。初めて編集室で観たときは「早いなぁ」と思いました。ドラマだとそのスピード感で良いのですが、映画になると早すぎて登場人物の中に入っていけない。映画化するにあたり、その辺は微調整しました。



『お母さんが一緒』©2024松竹ブロードキャスティング


Q:監督の過去作品は1カメ長回しで撮っている印象がありますが、今回は長回し芝居の合間にインサートカットが多く入っている感じがありました。


橋口:もう最初から3カメで撮っていますから。皆さん売れっ子で、特にネルソンズの青山くんは本当にスケジュールが取れなかった。そんなタイトなスケジュールだったこともあり、撮影部とも相談して、マルチカメラの3台でやることになりました。ただし、舞台中継やテレビドラマみたいにスイッチングで見せていくのではなく、映画本編として芝居をちゃんと見せていく。マルチカメラで人間をきちんと描くためにはどう撮るかを探りました。


そして宮島さんだからこそ、それを編集出来たのだと思います。あれだけマルチカメラ素材があると、僕だったらすごく時間がかかったでしょうね。宮島さんはその辺は上手いですね。テンポよくスピーディーに、見せるところは見せながらパパッと編集していく。すごく良かったと思います。


Q:映画の撮影ではいつも1カメなのでしょうか。


橋口:そうですね。だからもし皆のスケジュールがしっかり取れて、最初から映画として撮影したらどうなっていたかなと。でも、黒澤明監督だってマルチカメラでやっていますし、マルチカメラの見せ方は頭にあったので、そんなに違和感なく出来たかなと思います。僕が言うのもなんですが、長回しにこだわるがあまり「今ここの表情を見たいんだよ」ってときに、「寄りの画がない!」ということがないように(笑)。ご覧になった方がストレスなく物語に入っていけることを念頭に置いていたので、今回はスタイルにこだわることはしませんでした。


Q:現場ではモニターを見ているのですか。それともカメラ横でお芝居を見ているのでしょうか。


橋口:テストのときは現場で直接芝居を見て、そばにある小さなモニターでカメラの動きを確認しています。本番のときはブースに行って綺麗な4Kの画面で見ています。そこにモニターが3台並んでいるのは初めてでしたね。





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