リハーサルがもたらす現場での自由度
Q:カナのキャラクターはかなりユニークですが、どのようにして作られたのでしょうか。
山中:河合さんや周りの人からヒントをもらったこともあり、それが脚本に反映されているのは読んで分かっていただけたと思います。基本は脚本を読んでもらって、「何か分らないことありますか?」と聞くぐらいでした。脚本以上のことを細かく言ったりはしていません。
Q:カナの動きや目線が予測不能で楽しいですが、リハーサルなどは行われたのでしょうか。
山中:河合さんと金子さん、寛一郎さんとのシーンは全部リハーサルをやりました。そこでつかめたことも結構多かったので、河合さん1人のシーンではリハーサルはやりませんでしたね。
河合:リハーサルでやってみたことに対して、山中さんが「このままで大丈夫です」と感触を得てくださったので、私も方向性を掴めました。リハーサルの時間があったからこそ、現場での自由度が高かった。撮影前に「このカナで自由にやっていいんだ」という前提が作れたのはすごく良かったと思います。
Q:面白いセリフがバシバシ決まっていきますが、全て脚本通りでしょうか。アドリブなどはありましたか。
河合:ほとんど脚本通りですね。
山中:そうですね。私があまりアドリブ好きじゃないというのもあるかもしれませんが、仕草などは河合さんが割と好きにやってくれました。セリフに関しては直前に書いたものを当日に渡したりもしていました。
『ナミビアの砂漠』©2024『ナミビアの砂漠』製作委員会
Q:ハヤシが映像クリエイターだという点も面白かったです。ご自身を反映された部分などはあったのでしょうか。
山中:オリジナルを書くときは、まずキャラクター全員を自分の分身にすると書きやすいんです。自分の中にある日頃の問題意識みたいなものをバーッと書いていくんですが、今回は4年ぶりに脚本を書いたので、その4年分の思いが反映された部分もあります(笑)。これは自分や特定の誰かに限りませんが、映画や物を作って世の中に出すということが今すごく簡単になって来ている。その良さと、でも…みたいな(笑)。それが自分に向くこともあるなと。
Q:クリエイターというものに対して自虐的でアイロニカルな感じもありました。
山中:そうですね。「何やってるんだろう…」みたいな気持ちになることはありますね。
河合:ありますね。私も。
Q:そんなハヤシをカナが罵るシーンは面白いセリフに満ちていました。
河合:面白いセリフだと思うし、セリフだけ見ると自分も同意しますが、目の前の人に対して「お前みたいな男が作ったものが世の中に溢れたら毒じゃん」とまで言うことも大いに毒をはらんでいる(笑)。その矛盾している感じも面白かったです。この間も取材しているときにそのセリフを思い出してしまって…、自分の発言に慎重になったりします(笑)。