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『太陽の帝国』スティーヴン・スピルバーグを「社会派」に躍進させた記念碑的作品

『太陽の帝国』スティーヴン・スピルバーグを「社会派」に躍進させた記念碑的作品

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少年の世界を一変させた、日本軍の上海制圧



 テレビ映画『 激突!』(71)での名声獲得から現在に至るまで、さまざまな傑作を世に放ち続ける、エンターテインメント界の巨匠、スティーヴン・スピルバーグ監督。近年では、VR(ヴァーチャル・リアリティ)の世界を軸に、種々のカルチャーを吸収した『 レディ・プレイヤー1』(18)などの娯楽作を製作する一方で、アメリカの負の歴史と称されるベトナム戦争の真実を暴いた実話『 ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』(17)といった社会派ドラマをも放つなど、その振り幅の広さは業界随一である。彼に比肩する映画監督となると、そうそう居ないのではないか、とさえ思えるほどだ。汲めども尽きぬ才能には毎度のことながら、驚嘆させられる。


 いまやハリウッドのヒットメイカーとして比類なき存在となったスピルバーグ。彼のフィルモグラフィを覗くと、幾つかの戦争映画を監督していることがわかる。本稿で紹介する『太陽の帝国』(87)は、『1941』(79)に次いで製作された監督の2度目の戦争映画だ。第二次世界大戦をコメディとして映し出した『1941』とは対照的に、本作『太陽の帝国』は、ある少年の視点から戦争という過ちを描写した、至極真っ当な厭戦的作品なのだ。



 上海のイギリス租界に生まれ育った無垢な少年ジェイミー(クリスチャン・ベール)が、日本軍の租界制圧によって過酷な運命を強いられるさまを描く、戦争叙事詩『太陽の帝国』。英国の作家J・G・バラードの体験を綴った半自伝的な同名文学を基に、スピルバーグが映画化した本作は、戦争がいかに少年の世界に影響を与えるのか、感受性に富んだ無垢な心は戦争を通じてどう変わるのか、といったテーマを掲げている。


 オーディションで選び抜かれた新人子役時代のクリスチャン・ベールは、大人の思惑が交錯する戦争という混迷を経験し、悲劇の中で生きる人々から希望を享受する少年という、非常に難しい役柄を演じてみせた。


 共同租界内の邸宅で何不自由なく暮らすジェイミーは、空の世界に魅了されていた。将来は、日本軍の零式艦上戦闘機のパイロットになることが夢だった少年は、戦争の魔の手が忍び寄っていることなど全く知るよしもない。太平洋戦争が勃発すると、英米などから成る共同租界へも日本軍が侵攻、少年一家は避難の途中で離散する。


 両親とはぐれた少年は、蘇州の強制収容所へと送られ、そこで多くの人々との交流を通じて、精神的にも、肉体的にも、成長を遂げる。皮肉にも、戦争が少年を大きく成長させたのだった。しかし少年の、飛行機への愛と、飛行兵への畏敬の念、そして「飛ぶこと」に対するあこがれは、潰えることはなかった。



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