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『シンドラーのリスト』“スピルバーグ映画”を越境する「音」への取り組み

『シンドラーのリスト』“スピルバーグ映画”を越境する「音」への取り組み

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ミニマルに抑えたジョン・ウィリアムズの曲



 劇映画には通常、アンダースコアというものが付随する。一般に「劇伴」「BGM」とも呼ばれるそれは、劇中の物語状況や登場人物の感情を、音楽で盛り上げていく効果的な要素だ。


 1993年に製作されたスティーブン・スピルバーグのホロコースト映画『シンドラーのリスト』は、彼が得手とする映像表現とアンダースコアとの相乗作用が控えめだ。ナチスによるポーランド侵攻の後、商機を求めて同地にやってきたドイツ人実業家オスカー・シンドラー(リーアム・ニーソン)。映画はそんなヤマ師のような男が、ナチスのユダヤ民族虐殺を目にして人道主義への思いを強め、雇用者を含む1,100人ものユダヤ人を救うという決断に迫っている。


 そこには『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』(81)のようにアクションを加速させる勇壮なマーチも、『E.T.』(82)とエリオット少年の冒険や別れを飾ったオーケストラの響きもない。地球外知的生命体の発する五音のシグナルがシンフォニーへと転調していく、『未知との遭遇』(77)で発揮された実験性とも無縁だ。



 「史実だから作為を抑えた」または「深刻なテーマへの追求がおのずと音楽の居場所を失わせる」といった解釈もあるだろう。だがなによりアンダースコアは映像にリズムや緩急を与え、長尺の作品がもたらすストレスを知覚的にやわらげる。上映時間195分のモノクロ作品という、エンタテインメント市場ではリスキー極まる成果物の助けとなるはずだ。だが全編の約50%から70%を占めるといわれる映画のアンダースコアが、本作ではなんと20%に満たないのである。


 スピルバーグ作品の作曲を専属的に担当してきたジョン・ウィリアムズは、冒頭に挙げたコラボレーションとは異なる取り組みのもと、監督の企図に応じたという。


 「私が意識していたのは、この映画をメロドラマ化したくないということだった。この物語に必要なのは、穏やかで愛情深い音楽だと感じたんだ。だが本作には通常よりも音楽が少ないことがわかっていた。そんなスティーブンの選択にぴったりの方法は、音楽を非常にシンプルにすること。彼が『シンドラーのリスト』を撮った方法に、トリッキーなものは何もなかったからだ」


  このウィリアムズの考えは尊重され、同作を象徴するシンプル、かつメッセージ性を強く訴える印象的なメインテーマが氏によって用意された。またユダヤ教徒を描いたミュージカルの映画化『屋根の上のバイオリン弾き』(71)で編曲を担当した経験から、民族性を象徴し、その音色が魂に直結するものとして、バイオリンをメインとする楽器編成を主張。イスラエルのバイオリニストであるイツァーク・パールマンを演奏者として、初めて商業映画のスコアに起用している。



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