2018.04.10
※2018年4月記事掲載時の情報です。
Index
- 近年のスピルバーグでは異例の、ビスタで製作された『ペンタゴン・ペーパーズ』
- もともとワイドスクリーンを愛したスピルバーグ
- ワイドからビスタへの転向を図った80〜90年代
- 2000年代、ワイドスクリーンへの回帰と記憶装置としての映画形式への徹底
- なぜビスタだったのかーー形式主義ではない、折衷主義の証
近年のスピルバーグでは異例の、ビスタで製作された『ペンタゴン・ペーパーズ』
『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』をご覧になった観客の中で、特にスティーブン・スピルバーグ作品に精通している方は「おや?」と疑問に思われたことだろう。それは本作のアスペクト比(画角)が、1:1.85のビスタサイズだったからだ。
ミュンヘン五輪テロに端を発するモサドの報復を描いた『ミュンヘン』(05)以降、スピルバーグは最新作『レディ・プレイヤー1』(18)を含む8本の監督作品を、すべて横長サイズのワイドスクリーン(1:2.35〜1:2.39)で手がけている。しかし『ペンタゴン・ペーパーズ』はこの法則から逸脱し、ビスタで撮られているのだ。
もともとワイドスクリーンを愛したスピルバーグ
スピルバーグのアスペクト比に対する好みはキャリアの始めより明白で、自身初の商業長編作『続・激突! カージャック』(74)からワイドスクリーンを展開させてきた。初期の代表タイトルである『ジョーズ』(75)や『未知との遭遇』(77)など、横幅に拡がるこのフォーマットが各作を迫力あるものにしているのだ。
このワイドスクリーンに対するこだわりを後年、監督自身はこう語っている。「僕はワイドが好きで、画面の隅々にまで情報をちりばめて作っている。しかしテレビで放送されると、画面の左右がカットされる。それは映画監督として最も許されないことだ」(*1)