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アスペクト比が主張する『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』製作の真意

アスペクト比が主張する『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』製作の真意

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なぜビスタだったのかーー形式主義ではない、折衷主義の証



 しかし、このように時代的、あるいは形式的に最も『ミュンヘン』と近い立ち位置にあるはずの『ペンタゴン・ペーパーズ』が、フォーマットに頓着しない形で発表されたのは何故か? 従来のスピルバーグならば、そのままワイドスクリーンを踏襲したり、あるいは70年代映画のスタイルを適合させて本作を撮っても決しておかしくはなかったはずだ。ちなみに撮影を担当したヤヌス・カミンスキーによると、同作を35mmフィルムで撮影したのは、後者を目的としたものだと答えている。


 だが今回、スピルバーグにはそうしたこと以上に腐心すべき点があったのを、海外マスコミ向けのオフィシャルインタビューで自身が述懐している。


 「僕は『ペンタゴン・ペーパーズ』を、ライノタイプの植字技術や当時のアートスタイル、昔の新聞の印刷などに興味があったから撮ったんじゃない。過去を再現するために作ったわけじゃないんだ。『ペンタゴン・ペーパーズ』で描こうとしたことが、2017年に再び起きているから製作に踏み切ったんだ。今の政権から来ているすべての嘘が、いかにリチャード・ニクソンの嘘やニクソン政権の腐敗と関連しているか、見逃すことは出来なかった。この映画を作ることは、社会的義務だと思ったんだよ」




 この発言から察せられるように、本作で優先されるべきは「今日的なテーマを素早く実現化させる」即応さであって、監督の中でフォーマットへのこだわりは、それほど重要視されるものではなかったに他ならない。そもそもこうしたアクティブな姿勢を見せられては、スピルバーグがはたして徹底した形式主義者だったのかさえ疑わしく感じられてくる。


 そんな疑問に関し、米“Rolling Stone”誌1981年6月号におけるインタビューを引用することで、この論考を閉じたい。『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』アメリカ公開時期の発言で、やや隔世の感はあるものの、その内容には『ペンタゴン・ペーパーズ』に通じる芯がうかがえると思う。


 「僕はマーティン(・スコセッシ)やブライアン(・デ・パルマ)みたいに、ひとつのスタイルを展開していくことに対して興味はないんだ。僕は常に折衷主義者なんだ。手慣れたものよりも、チャレンジ精神を必要とするものをやりたいのさ」


出典

(*1)レーザーディスク『スペシャル・コレクション 未知との遭遇』(パイオニアLDC)映像特典より

(*2)Douglas Bankston.May.2000.American Cinematographer Magazine.Hollywood:ASC.より

(*3)『マイノリティ・リポート』プロダクションノートより



文: 尾崎一男(おざき・かずお)

映画評論家&ライター。主な執筆先は紙媒体に「フィギュア王」「チャンピオンRED」「映画秘宝」「熱風」、Webメディアに「映画.com」「ザ・シネマ」などがある。加えて劇場用パンフレットや映画ムック本、DVD&Blu-rayソフトのブックレットにも解説・論考を数多く寄稿。また“ドリー・尾崎”の名義でシネマ芸人ユニット[映画ガチンコ兄弟]を組み、TVやトークイベントにも出没。

Twitter: @dolly_ozaki



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作品情報を見る


ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書

3月30日(金)全国ロードショー

(c)Twentieth Century Fox Film Corporation and Storyteller Distribution Co., LLC.

配給:東宝東和


※2018年4月記事掲載時の情報です。

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