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アスペクト比が主張する『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』製作の真意

アスペクト比が主張する『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』製作の真意

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ワイドからビスタへの転向を図った80〜90年代



 そんなスピルバーグだが、1982年の『E.T.』をきっかけに、ワイドスクリーンからビスタサイズへと自作のアスペクト比を変えている。理由は同作が、子どもの視界を再現するためには幅広のワイドスクリーンでは齟齬をきたすこと。そしてもうひとつは、ハリウッドがビデオによる二次収益を視野に入れ、家庭用テレビとのフレーム差を縮めようとしたことが起因している。これらはその後のスピルバーグ作品のビスタサイズ化に拍車をかけ、ことに戦場描写のリアリズムを標榜した『シンドラーのリスト』(93)や『プライベート・ライアン』(98)においては、


 「ワイドスクリーンは映画の人工的な画角で、観客に現場にいるような体験をさせるのならば、視界にフィットしたビスタのほうが没入感を得られる」(*2)のだと、スピルバーグはビスタへの転向を正当化させることになる。




 とはいえ、映画に関して彼は形式を重んじているところがあり、条件に応じて、ときおりワイドスクリーンが顔を覗かせていた。たとえばピーターパンのスピンオフ作品『フック』(91)などは、昔のスタジオ撮影映画の様式に呼応し、レトロスペクティブな映画フォーマットとして同画角が用いられている。もともとはJ・G・バラードの原作を基にした『太陽の帝国』(87)も、戦争大作ばりに65mm(画角は1:2.20ワイド)で撮影しようと試みられたものの、専用カメラが重く機動性に欠けるという理由から断念したのだった。


 ちなみに『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』(81)を筆頭とする「インディ・ジョーンズ」シリーズがアナモフィック(圧縮させた像を上映時に特殊レンズで戻す)方式のワイドスクリーンなのは、製作であるジョージ・ルーカスの意向が強く働いている。



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