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アスペクト比が主張する『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』製作の真意

アスペクト比が主張する『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』製作の真意

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2000年代、ワイドスクリーンへの回帰と記憶装置としての映画形式への徹底



 だが結果として、この形式主義にも似た意識が、ゼロ年代以降のスピルバーグ作品に変化をもたらすことになる。そのひとつがワイドスクリーンへの帰還であり、そしてもうひとつが、記憶装置としての映画形式への徹底だ。どちらもフィリップ・K・ディック原作の近未来サスペンス『マイノリティ・リポート』(02)を起点とする動きであり、前者に関して監督自身はこう語っている。


 「ワイドスクリーンは映画を映画たらしめる黄金の比率であって、僕はそれを再現したかったんだ」(*3)


 加えてスピルバーグは『マイノリティ・リポート』を未来版の『フレンチ・コネクション』と位置付けたことから、同作では刑事アクションの名作『フレンチ・コネクション』(71)を彷彿とさせる「70年代映画」調の外殻をまとわせている。全編の約38%を脱色させる「ブリーチバイパス」現像はカラー映像を不鮮明にさせ、同作ほか『コンドル』(75)や『大統領の陰謀』(76)といった、70年代のポリティカル陰謀ジャンルを反復する見た目を持つことに成功している。




 そして、このようなスピルバーグの試みは、冒頭で記した『ミュンヘン』へとそっくり受け継がれている。同作はワイドスクリーンに併せ、スピルバーグが過去あまりやらなかったズームなどのカメラワーク、さらには「銀残し」現像によるカラーの不鮮明化など、70年代映画のようなルックをほどこすことで、作品の背景である1970年代へのアクセスをより説得力のあるものにしているのだ。



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