山中瑶子監督が19歳で自主制作した映画『あみこ』(17)。河合優実は、まだ何者でもなかった高校3年生の時にこの作品を観ていた。『あみこ』に刺激を受けた河合は「女優になります」と書いた手紙を山中監督に手渡し、「いつか出演したいです」と伝えたという。そんな運命的に出会っていた二人から生み出されたのが、本作『ナミビアの砂漠』だ。そして2024年5月のカンヌ国際映画祭。監督週間で上映された『ナミビアの砂漠』は、女性監督として史上最年少となる「国際映画批評家連盟賞」に選出されることとなる。
エネルギーに満ち溢れ、世界から絶賛された『ナミビアの砂漠』は、いかにして生み出されたのか。出会うべくして出会った二人、山中瑶子監督と河合優実に話を伺った。
『ナミビアの砂漠』あらすじ
世の中も、人生も全部つまらない。やり場のない感情を抱いたまま毎日を生きている、21歳のカナ(河合優実)。優しいけど退屈なホンダ(寛一郎)から自信家で刺激的なハヤシ(金子大地)に乗り換えて、新しい生活を始めてみたが、次第にカナは自分自身に追い詰められていく。もがき、ぶつかり、彼女は自分の居場所を見つけることができるのだろうか・・・?
今回は動画版インタビューも公開! あわせてお楽しみください!
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原作モノからオリジナル企画へ
Q:元々動いていた、河合優実さん主演の原作モノの企画を途中でオリジナルに切り替えたそうですが、以前からあったアイデアを使われたのでしょうか。
山中:無かったですね。オリジナルに切り替えた当初も全然違うものを書いていました。ただ、その企画も最後までいけるモチベーションがなく…、捨てました(笑)。
Q:河合さんとディスカッションを重ねられたとのことですが、それは企画や脚本の制作段階ですか。
山中:そうですね。自分1人で考えていたものが微妙すぎたので、河合さんの助けもお借りしたいなと。何度かお話させていただきヒントをもらいました。
Q:企画・脚本段階から参加されるようなことは、河合さんはこれまであったのでしょうか。
河合:脚本が出来る前に監督とお会いするのは稀ですね。山中さんから「こういう内容はどう思いますか?」と聞かれるのではなく、どちらかと言うと、身の回りのいろんなことを話すような感じでした。それが山中さんの材料になったのかなと。
『ナミビアの砂漠』河合優実
Q:ディスカッション自体はいかがでしたか。
河合:楽しかったですね(笑)。私の話が助けになっていれば良いなと思いました。
山中:私が一度も締め切りを守らなかったので…(笑)。皆が待っている状況で、たぶん河合さんも不安だったと思います。でもその割には、“のほほん”としてましたよね(笑)。
河合:そうですね。「やばい…」みたいなオーラはなかったと言ったらアレですが(笑)。私も楽観的かつ山中さんをとにかく信じていたので、「なんとかなるでしょう」と思いながら見ていました。
山中:本当ですか⁉︎ よかった(笑)。私は内心「やばい!」って思っていました。河合さんを始め、色んな人に会って話を聞くことを2ヶ月ほどやって、最後の1ヶ月で書く!みたいな。そういうスピード感でした。
Q:ディスカッションを経て、その後1ヶ月で一気に書き上げたのでしょうか。
山中:一気に書いたと言えば聞こえはいいのですが、書けない日は、また誰かと話したり…、みたいな感じでした。一人で書きながらも、とにかく色んな人に話を聞いていました。
Q:河合さんは、初稿をご覧になったときはどんな印象でしたか。
河合:「面白い!」と思いましたし、そこまでの過程も見ていたので、「とにかく書き上げてくれて、ありがとうございます!」と。この期間でここまで来られたことに、とりあえずガッツポーズ!という感じで読んでいましたね(笑)。監督の中ではまだ固まっていないところもあったのかもしれませんが、それも含めて創作を楽しめるような空気を感じました。