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『透明なわたしたち』松本優作監督×編集:松岡勇磨 感情をつなげる編集とは 【Director’s Interview Vol.437】

『透明なわたしたち』松本優作監督×編集:松岡勇磨 感情をつなげる編集とは 【Director’s Interview Vol.437】

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カットを割る難しさ



Q:ドラマをやることになり、リサーチなどは行いましたか。


松岡:参考になる映画を監督に聞いたところ、『少年の君』(19)という作品を教えてもらいました。そうしたやりとりもありつつ、映画は好きでよく観に行っていたので、そのイメージも活用せねばと思っていました。「勉強するぞ」という気持ちで映画を観始めても、いつのまにか映画を楽しんでしまう(笑)。でもその没入感は編集の力なのだろうなと、分かってきたものがあったかもしれません。


Q:編集に際して監督から松本さんへリクエストはありましたか。


松本:特にないですね。今の『少年の君』をお伝えしたくらいです。こちらの希望を最初から押しつけるよりも、自分の感覚でやってもらった方が絶対に良い。違うところやズレが出てきたとしても、修正すれば大丈夫。こちらのやり方を言ってしまうと、今までやってきたことと変わりませんから。まずは松岡さんの感覚でやっていただきたいなと。


松岡:確かに細かくは言われなかったですね。最初にお見せした編集では、一言「カットしすぎ」と言われました。CMやMVのときも「カット割りすぎだ」とよく言われるんです。またやっちゃったなと(苦笑)。次は全然割らずに見てもらったら、「割らなすぎ」と(笑)。最初はかなり試行錯誤しました。


松本:カット割も色々あって、芝居の最中にカットを割ると感情が途切れてしまうことがある。そこを指摘したのかもしれません。その辺は一緒にやりながら伝えていければと思っていましたが、撮影でバタバタしていたので、うまく伝えられなかったですね(苦笑)。


松岡:“感情をどこで切るか”ということは、すごく勉強になりました。



ABEMAオリジナルドラマ「透明なわたしたち」© AbemaTV. Inc. All Rights Reserved


Q:リファレンスとして教えた『少年の君』ですが、そこから伝えたかったのはテーマの部分でしょうか。それとも技術的な部分でしょうか。


松本:それは両方ありました。配信ドラマって、テレビドラマでもないし映画でもない。それぞれの良いところを合わせる必要があるんです。映画の“間”だけでやってしまうと、テレビやスマホで見ている人は、すぐ違うところに意識がいってしまう。テンポ感を意識しながらも、見せる芝居はしっかりと見せる必要がある。そこがすごく難しい。『少年の君』という作品は、そこがすごくうまく出来ているんです。カットも多いしテンポも良いのですが、芝居もしっかり見せられている。そこを意識してもらえると良いかなと。映画でもなくドラマでもないという意味では、いきなり難易度が高かったかもしれませんね(笑)。


一方で配信ドラマの場合は、尺が厳密に決まっておらず、ざっくり45分くらいという目安があるだけ。そこの自由度は高かったと思います。


Q:画コンテは作られたのでしょうか。また現場のカメラは何台で撮られたのでしょうか。


松本:基本的にコンテは作っていません。ただ今回はCGやアクションがあったので、そういったシーンだけは共通認識を取るためにコンテを作りました。カメラは基本2台でしたが、冒頭の事件や、文化祭のシーンなどは4台くらいで撮っています。カメラの数はシーンによって臨機応変に変えていますね。


Q:コンテが存在せずカメラの台数も多いということは、編集の自由度は高かったのでしょうか。


松岡:そうですね。どこを寄り画にしようが引き画にしようが、全てのパターンで編集可能でした。自由度はかなり高かったです。最初に編集した印象はMVの感覚に近かったですね。


Q:現場のOKカットは優先的に使用されているのでしょうか。


松本:OKカットをベースにしてもらってはいますが、現場のOKと実際に編集で使うカットが変わることはよくあります。僕はマスターショットで一通り撮ることが多いので、テレビドラマの撮影のように、“このセリフのときはこのカット”みたいに決めて撮ることはありません。その分、引き画にするのも寄り画にするのも自由なのですが、逆に言うと自由すぎて難しいかもしれませんね。


松岡:難しかったですね(笑)。でも楽しい部分が大きかったです。ちなみに、第3話で倉悠貴さんが階段の上から見つめるシーンでは、スタートがかかる前の倉さんの表情がとても良かったので、その部分を使っています。





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