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『花嫁はどこへ?』キラン・ラオ監督 大事なのは観客が自分でたどり着くこと 【Director’s Interview Vol.438】

© Aamir Khan Films LLP 2024

『花嫁はどこへ?』キラン・ラオ監督 大事なのは観客が自分でたどり着くこと 【Director’s Interview Vol.438】

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あえて検閲しすぎない



Q:プールとジャヤをはじめ様々な価値観の女性が登場しますが、それぞれの価値観を否定していないところが印象的でした。


ラオ:コンペに応募された脚本をもとに、脚本家のスネーハー・デサイと一緒に脚色しました。特にプールとジャヤに関しては、それまでの2人の人生を通して彼女たちのアイデンティティがどのように変わっていったのか、そこの部分を膨らませていきました。プールとジャヤ以外の女性たちも、それぞれの立場を明確にしました。特に村や家族の中で生きる女性たちは、彼女たちの立場を細かく描いています。嫁vs姑の古典的な対立構造もちょっと視点を変えて描きましたし、屋台の女主人は自力で生きてゆく独立した女性として描きました。どの女性についても、それぞれの立場の見え方を意識しています。スネーハーは普段テレビの脚本も書いていることもあり、こういった脇役の描写がとても上手。彼女に負うところは大きかったですね。



『花嫁はどこへ?』© Aamir Khan Films LLP 2024


Q:女性たちや警察官、駅員、駅に住みついているチョトウと足の悪い友人など、この映画に出てくる人々は一面的には描かれておらず、良い意味で裏切られます。意図したものはありましたか。


ラオ:今回のキャストは多様な才能がある人たちが集まってくれたので、その点ではとても恵まれていました。映画に出てきたキャラクターたちは、ユーモアの力で成立している部分もあります。例えば、駅の住民たちは一見怖い人たちに見えますが、そのコミュニティに入っていくと、見た目とは違うことがわかってくる。そこがまさにユーモアで描いたところですね。


また、脚本化の際には、“配慮すべき表現”について検討を重ねました。この映画では一見配慮が無いような表現も出てきますが、それは理由があって使っています。例えば、「口がきけない女性と結婚するなんて理解があるわね」と茶化したら、「いや、わたしは話せますよ」と返事をされるジョークがあるのですが、これはインドの村では身体的な欠点を笑いのネタに使うということから来ています。誰もが完璧なわけではないのだということを表すために、あえて検閲しすぎずにこういった表現も使った次第です。




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