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『花嫁はどこへ?』キラン・ラオ監督 大事なのは観客が自分でたどり着くこと 【Director’s Interview Vol.438】

© Aamir Khan Films LLP 2024

『花嫁はどこへ?』キラン・ラオ監督 大事なのは観客が自分でたどり着くこと 【Director’s Interview Vol.438】

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観客が自分でたどり着くこと



Q:夫の名前を呼ばなかったり、ベールで顔を隠したりと、プールの行動で、彼女の感情の機微を感じさせます。そういった視覚的な表現・演出にこだわりはありますか。


ラオ:今回大変だったのは、言葉で語り過ぎずに会話を成立させることでした。そのため、脚本を何稿も重ねました。セリフも短く簡潔にすることを心掛け、ある意味“セリフでカッコつけない”ことに努めました。一行のセリフよりも多くを語らせることは、言葉がなくても可能なんです。元々の脚本はモノローグも多かったのですが、その辺もバッサリ切っています。演技をさせ過ぎず、伝え過ぎない。こちらから導き過ぎるのではなく、観客が自分でたどり着いてもらうことが大事だと思います。



『花嫁はどこへ?』© Aamir Khan Films LLP 2024


Q:本作における2001年という時代設定は、インドにおいてどういった意味を持つのでしょうか。


ラオ:2001年はまだインターネットの普及前で、コミュニケーション手段も限られていた時代です。そして当時の女性は、結婚して家に入るのが当然とされていて、教育を受けることは奨励されていませんでした。当時の古い世代の人からすると、結婚をきっかけに入ってきた村を女性が出ていくことや、教育や仕事のために女性が村を出ることは、ありえないことでした。そこにネットなどのテクノロジーが入ってきたことにより、徐々に環境が変わっていくわけです。当時と今とでは、女性取り巻く環境が全然違いますね。


Q:女性たちが自分のやりたいことを目指す姿が描かれますが、それを映画として伝える意義をどう感じていますか。


ラオ:映画はメッセージを伝える手段でもありますから、そこに私の考えはかなり反映されています。国民の半分が女性ならば、国民の半分は充分に教育の機会を与えられていないということ。それどころか、人として否定されたり、職場でも安全性が確保されていない。出産における母体の健康すら保証されていません。私はインドの国民の一人として、皆が女性の権利について議論するべきだと考えています。映画という手段を使ってそれを伝える機会があることは、正にチャンスだと思いますね。




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監督/製作:キラン・ラオ

1973年ハイデラバード生まれ、コルカタで育つ。父方の祖父は王族出身で、外交官を経て出版社を経営していた。伝統あるカソリック系の女子校ロレート・ハウスで学び、19歳のときに家族でムンバイに移住。同地のソフィア女子大学を卒業。その後デリーのジャミア・ミリア・イスラミア大学で修士号を得ている。アカデミー外国語映画賞(当時)にノミネートされた2001年の大作映画『ラガーン』のアシスタントディレクター、同年ベネチア国際映画祭金獅子賞を受賞したミーラー・ナーイル監督『モンスーン・ウェディング』のセカンドアシスタントディレクターを務め、映画業界でのキャリアをスタート。プロデューサーとして、『こちらピープリー村』(10)、『デリー・ゲリー』(11)、『ダンガル きっと、つよくなる』(16)、『シークレット・スーパースター』(17)など数々のヒット作を製作。2010年の『ムンバイ・ダイアリーズ』で監督デビュー。アーミル・カーンが主演を務める同作は、トロント国際映画祭でプレミア上映され、高い評価を受けた。私生活では、『ラガーン』の撮影現場で出会ったアーミル・カーンと2005年に結婚。2021年に夫婦関係を解消したが、アーミルは本作の製作を務める他、共同設立した水の安全と持続可能で採算性のある農業を目指すNGO「パーニー(水)・ファウンデーション」でも共に活動を続けている。



取材・文:香田史生

CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。





『花嫁はどこへ?』

10月4日(金)新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町、シネ・リーブル池袋ほか全国公開

配給:松竹

© Aamir Khan Films LLP 2024

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