妥協できない「画」へのこだわり
Q:撮影現場ではどのような感じだったのでしょうか。
小島:撮影してる時はフレーミングなど細かいところが気になってしまい、結構テイクは重ねました。
画に余計なものが入りたくないというか、必要じゃないものがシーンとか画に入ってきちゃうと、それを省きたくなっちゃうんです。そういうところは、すごく細かくやりました。
Q:CMを撮ってるときと演出のアプローチは違えども、CMの時と同じように、画に対するこだわりみたいなのものは現場で出たんですね。
小島:そうですね。「まだ撮影するんですか?」みたいな感じで、結構みんな呆れてました(苦笑)。撮影してると、必要じゃないものがどうしても入ってきちゃうんですよね。たとえ一瞬でも光が入ってしまったり、背景で誰か余計な動きをしたりすると、観ている人の意識がそっちに行ってしまう。意図的でない動きは全てノイズになるので、、そういうことが起こった場合は全て最初から撮り直しました。
Q:役者さんの演技に対しても気になる部分はあったのでしょうか。
小島:そうですね。前述の演技メソッドに則りつつも、画的に気になるところは取り直しました。
Q:映画製作は妥協の連続だなんて言う監督もいますが、監督自身としては、今回の撮影は満足できたのでしょうか?
小島:脚本的な視点での反省はありますが、役者の人に来てもらってスタッフが撮ってる画に関しては、不満はないですね。
Q:こだわりぬいた結果ですね。
小島:そうですね。助監督の人に無理を言いまくってしまったんです。撮影も45日間もかかったので。
Q:日本映画にしては長い撮影日数ですよね。
小島:長いですよね。自分の中では長いつもりはなかったんですけど、配給会社の方とかと話すと、「えー!45日も撮影したんですか!」みたいな反応でした。「日本映画、今、長くて20日ですよ」とか。「短いので1週間で撮ってますからね」みたいに言われました。
Q:撮影ボリュームも1日3シーンまでと決めていたそうですね。
小島:そうなんです。撮影日数を切り詰めると自然と徹夜が続いてしまうじゃないですか。なんかあの疲労感というか、そういうものは絶対画に出るなと思ったんです。なので、健全に撮影を進めようと思い、撮影量は1日3シーンまでと決めました。
また、今回は福岡で撮影しているのも大きかったです。例えば東京の郊外で撮影しようとしたら、新宿に朝5時に集合してロケバスで移動して、夜中まで撮影して、また2~3時間寝て早朝に集合、、とかの繰り返しになることが多いんですね。でも福岡だと街がコンパクトなので、朝もちゃんと普通に起きて、7時とか8時に撮影現場に直行することが可能なんです。そういう意味では時間に余裕もできて、とても撮影がしやすかったですね。
Q:そうして撮影が終わり、編集作業に移るわけですが、今回の編集では協力という形で深田晃司監督が入っています。どういった経緯でご一緒されたのでしょうか?
小島:配給会社のエレファントハウスの皆さんと編集した作品について議論を重ねていた際に、以前エレファントハウスが配給した『 淵に立つ』の監督である深田晃司監督に見てもらったらどうかという意見が出たんです。それで、僕もぜひとお願いして、実際に見ていただきました。しばらくすると、この映画の問題点や改善点がA4用紙にびっしり書き込まれて、深田さんから送られてきました。そこに最初に書いてあったことがもう図星でして、、自分でもハッとさせられて、確かにそこを直したほうがいいと思ったんです。でも実際に編集するとうまく繋がらない部分も出てきたので、そこはもう腹を決めて再撮影しました。
Q:再撮影まで!?それで編集は変わったのでしょうか。
小島:失った部分もあるのですが、だいぶ分かりやすくなったなという感じです。