若い二人の集中力
Q:ヘレン・ミレンの存在がこの映画に説得力をもたらしていますが、現場での彼女はいかがでしたか。
フォスター:ヘレン・ミレンはとても素晴らしい役者です。彼女の話を聞いていると、いつの間にかこちらが温かい気持ちになっている。やはり役者としての力があるからでしょうね。
彼女が参加したときには既に若者たちの撮影が始まっていたので、彼女には「これまでのデイリー(日毎に収録された映像)はすべて見てください」とお願いしました。そうすることで若者たちのニュアンスを感じ取ってもらえるかなと。現場では彼女といろいろ話をして、その時の動作やショットの意図などを細かく伝えました。
Q:サラとジュリアンを演じたアリエラ・グレイザーとオーランド・シュワートが瑞々しい演技を披露しますが、彼らのキャスティングの経緯を教えてください。
フォスター:コロナ禍のため、初めてzoomでオーディションを行いました。「この二人だったら相性が良いだろうな」と思ったのですが、実際に二人が会ったわけではない。思っていたような雰囲気が出なかったらどうしようと、少し心配していました。実際に撮影が始まると、二人は全く問題なかった。自分の判断は正しかったのだと安心しましたね。
現場ではリハーサルを繰り返し、話し合いを重ねました。今の若い俳優は集中力に欠けているところがありますが、この二人は全く違いました。二人ともすごい集中力を持っていたんです。オーランドはセットに入るときに、絶対に携帯電話を持って来ない。キャストにはとても恵まれましたね。
『ホワイトバード はじまりのワンダー』© 2024 Lions Gate Films Inc. and Participant Media, LLC. All Rights Reserved.
Q:最近は撮影のマティアス・クーニクスビーザーと組まれることが多いかと思いますが、今回のルックはまるで絵画のようでした。撮影についてはどのように話して進められたのでしょうか。
フォスター:外のシーンはフィルムで、室内シーンはデジタルで撮影しました。最近はこの組み合わせで撮影をすることが多く、『プーと大人になった僕』(18)や『オットーという男』(22)でも同じ手法で撮影しています。
室外シーンは主にチェコで撮影したのですが、現地の方から「冬だから曇りが多い。太陽の光を期待してもダメだよ」と言われていました。ですが、まるで映画の神様がついていたかのように、撮影のタイミングではちょうど雲が分かれて太陽が出て来てくれた。おかげでとても上手く撮ることが出来ました。