全世界で大ヒットを記録した『ワンダー 君は太陽』(17)。本作『ホワイトバード はじまりのワンダー』は『ワンダー 君は太陽』のもうひとつの物語。『ワンダー~』で主人公オギーをいじめて退学処分になったジュリアンだったが、おばあちゃんが話してくれる壮絶な話を聞くことにより、彼の心が少しずつ変わっていくーー。
監督を手掛けたのは『ネバーランド』(04)『プーと大人になった僕』(18)などのファンタジー・ヒューマンドラマから、『007/慰めの報酬』(08)『ワールド・ウォー Z』(12)などの超大作エンターテインメントまで、突出した才能を発揮してきた名匠マーク・フォースター。
フォースター監督はいかにして『ホワイトバード はじまりのワンダー』を作り上げたのか。東京国際映画祭で来日した監督に話を伺った。
『ホワイトバード はじまりのワンダー』あらすじ
いじめによって学校を退学処分になったジュリアン(ブライス・ガイザー)は、自分の居場所を見失っていた。そんな中、ジュリアンの祖母のサラ(ヘレン・ミレン)がパリから訪ねて来る。あの経験で学んだことは、「人に意地悪も優しくもしない。ただ普通に接することだ」と孫の口から聞いたサラは、「あなたのために話すべきね」と自らの少女時代を明かす。 時は1942年、ナチス占領下のフランスで、ユダヤ人であるサラ(アリエラ・グレイザー)と彼女の両親に危険が近づいていた。サラの学校にナチスが押し寄せ、ユダヤ人生徒を連行するが、サラは同じクラスのジュリアン(オーランド・シュワート)に助けられ、彼の家の納屋に匿われることになる。クラスでいじめられていたジュリアンに何の関心も払わず、名前すら知らなかったサラを、ジュリアンと彼の両親は命がけで守ってくれる。日に日に二人の絆が深まる中、終戦が近いというニュースが流れるのだが──。
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“優しさ“と救済”を伝えたい
Q:本作に携わることになった経緯を教えてください。
フォスター:2020年のコロナ禍に、原作であるグラフィックノベルを読みました。納屋の中から外に出られないというサラの状況は、ロックダウン中の自分にはとても共感できるものでした。これまで自分が手掛けてきたほとんどの作品は“救済”を一つのテーマにしています。本作はラブストーリーでもありますが、この作品でも“優しさ”そして“救済”を伝えたいと思いました。
Q:冒頭、ジュリアンがパーカーを被って登校するバックショットから始まりますが、前作との対比に引き込まれます。
フォスター:フードを被ることによって彼の“隠れていたい”という意識が伝わったかと思います。この映画の中でのジュリアンは、最初はずっと下を向いていますが、だんだんと上を向くようになっていく。そういう象徴になればと思いました。
『ホワイトバード はじまりのワンダー』© 2024 Lions Gate Films Inc. and Participant Media, LLC. All Rights Reserved.
Q:若い世代に戦争を伝えるという意味では、この映画自体がヘレン・ミレン演じるおばあちゃん自身と重なります。そもそも映画は物語を語るものですが、伝承という点で意識したものはありますか。
フォスター:映画の枠組み自体はグラフィックノベルのままですが、今回は“伝承”や“尊敬”をすごく大事にしました。子供の頃は皆、祖父母の話をあまり聞いていなかったと思いますが、彼らの経験は若い世代に伝えていくべきものですし、今はそれが欠けてしまっています。この映画ではそういったものが伝わって欲しい。ぜひ家族で観ていただきたいですね。