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『不思議の国のシドニ』イザベル・ユペール 伝統とモダンがミックスされている日本に惹かれる【Actor’s Interview Vol.47】

©2023 10:15! PRODUCTIONS / LUPA FILM / BOX PRODUCTIONS / FILM-IN-EVOLUTION / FOURIER FILMS / MIKINO / LES FILMS DU CAMÉLIA

『不思議の国のシドニ』イザベル・ユペール 伝統とモダンがミックスされている日本に惹かれる【Actor’s Interview Vol.47】

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人間的な幽霊像



Q:本作には、シドニの元夫の幽霊が出てきますが、日本の伝統的なそれとは異なりますし、かなりユーモラスでもあります。この幽霊像についてはどう思われましたか。


ユペール:そうですね、幽霊はシドニの中にずっと生きていたけれど、彼女が日本に行って初めて目に見えるようになるというのが、この映画のポイントだと思います。でも彼女が新しい人生を歩み始めるためには、いつかはそれを追い払わなければならない。わたしはエリーズの幽霊の描き方が気に入っています。ファニーでもあり、心を惑わせる存在でもある。煙のなかにいるような幻想的な描き方とは異なり、もっとリアルで人間的なのです。



『不思議の国のシドニ』©2023 10:15! PRODUCTIONS / LUPA FILM / BOX PRODUCTIONS / FILM-IN-EVOLUTION / FOURIER FILMS / MIKINO / LES FILMS DU CAMÉLIA


Q:編集者、溝口のセリフにも出てきますが、日本ではスピリットというのはどこにでもいると信じている人が多いと思いますが、あなたはそういう考え方に対してはどう感じられますか。ビザール(奇妙)な印象がありますか?


ユペール:いいえ、ビザールというのとは違いますね。人によってそれぞれ亡くなった人との絆の持ち方は異なるものだと思うので。たしかに西洋の死の観念とは異なりますが、日本で伝統的にそのように考えられているのは理解できます。たとえばアフリカなどでも、死んだ人に対する独特の考え方、強いコネクションがありますよね。フランス人にとってはその違いがミステリアスで魅了されるのだと思います。日本の幽霊が出てくる小説は、フランスでもとても人気があります。


Q:本作は死をテーマにした作品でもありますが、あなたは死に対してどんな考えを持っていらっしゃいますか。


ユペール:正直、よくわからないです。ふだん死について考えることはありませんし、この作品を撮るときも、死よりはむしろ再生について考えていました。もう人生は終わったと思っていた人がふとしたきっかけで再生する、そんな希望を観た人に感じさせる物語だと思います。



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イザベル・ユペール

1953年、パリ生まれ。ヴェルサイユの音楽・演劇学校やパリの国立高等演劇学校などで学び、1971年に『夏の日のフォスティーヌ』で映画デビュー。クロード・シャブロル監督『ヴィオレット・ノジエール』(78)、ミヒャエル・ハネケ監督『ピアニスト』(01)でカンヌ国際映画祭女優賞を受賞。さらにポール・ヴァーホーヴェン監督『エル ELLE』(16)でアカデミー賞主演女優賞にノミネートされた。その他の主な出演作に、ジャン=リュック・ゴダール監督『勝手に逃げろ/人生』(79)、ミア・ハンセン=ラヴ監督『未来よ こんにちは』(16)、ホン・サンス監督『クレアのカメラ』(17)、フランソワ・オゾン監督『私がやりました』(23)などがある。



取材・文:佐藤久理子

パリ在住、ジャーナリスト、批評家。国際映画祭のリポート、映画人のインタビューをメディアに執筆。著書に『映画で歩くパリ』。フランス映画祭の作品選定アドバイザーを務める。




『不思議の国のシドニ』

12月13日(金)シネスイッチ銀座ほか全国順次ロードショー

配給:ギャガ

©2023 10:15! PRODUCTIONS / LUPA FILM / BOX PRODUCTIONS / FILM-IN-EVOLUTION / FOURIER FILMS / MIKINO / LES FILMS DU CAMÉLIA

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