© 2024 CG Cinema / Scala Films / Arte France Cinema/ Hil Valle
『映画を愛する君へ』アルノー・デプレシャン監督 映画に優劣は存在しない【Director’s Interview Vol.468】
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映画に優劣は存在しない
Q:多くの映画が出てきますが、ヨーロッパの映画だけではなくハリウッドのアクション大作も出てくることに驚きます。普段からそういったジャンルの映画もご覧になるのでしょうか。
デプレシャン:私は普通の一観客であり、あらゆる分野の映画を観ています。アメリカのエンタメ映画も大好きです。私は映画に優劣はないと考えていて、この映画は高尚だけど、この映画は俗っぽい、などということはありません。その映画を観る観客がそれぞれ、作品に芸術を見出すということが大切なんです。『ダイハード』(88)の中にも、芸術のような素晴らしいアクションシーンがあるわけですから。
Q:映画からのシーンの抜粋は楽しい作業でしたか? それぞれどのような基準で選ばれたのでしょうか。
デプレシャン:とても楽しい作業でしたね。いろんな映画が滝のように流れて来て、その映像を水のように浴びて欲しかった。ただ、いろんな映画の断片を集めることは、著作権の面で非常に難しく、全てをクリアにするまでに1年近く掛かりました。その分作業も膨大になりましたが、とても意味のあるものになったと思います。ただ、これは私の個人的なシネマテークにしたかったわけではありません。だから私の好きな映画や監督が全部入っているわけではないのです。あくまでも観る方に向けて、多くの映画を集めました。
『映画を愛する君へ』© 2024 CG Cinema / Scala Films / Arte France Cinema/ Hil Valle
Q:あなたの分身とも言えるポール・デダリュスは大人になった時に、全く違うタイプの役者が演じています。そこに込めた意図を教えてください。
デプレシャン:ポール・デダリュスは、マチュー・アマルリック主演『そして僕は恋をする』(96)という映画に出て来る架空の人物で、マチューと一緒に作り込んでいったキャラクターです。恋人や友人など、自分の周りにいるあらゆる人を敬う人物として描いています。ポールを違うタイプの役者に演じてもらったのは、観客が十人十色であるように、演じる側もバリエーションに富んだ役者がいるということを見せたかったからですね。
Q:本作には『乱』(85)のみが日本映画として出てきましたが、影響を受けた好きな日本映画や日本の監督がいれば教えてください。
デプレシャン:尊敬してやまないのは大島渚監督で、初めて影響を受けたのは溝口健二監督です。そして昔の映画では小津安二郎監督、現代においては濱口竜介監督の映画をいつも参考にしています。挙げ出すとキリがないですね。今回は日本映画は1本しか出て来ませんが、私の映画作りに影響を与えたのは数多くの日本映画なのです。
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監督/脚本:アルノー・デプレシャン
1960年、フランス北部の街ルーペ生まれ。パリ第3大学で映画を学んだのち国立映画学校ラ・フェミスで演出を学ぶ。卒業後の1991年、『二十歳の死』でアンジェの第3回プレミエ・ブラン映画祭に出品され、ジャン・ヴィゴ賞を受賞したことで、一気にその名前が注目されることとなる。1992年、『魂を救え!』では、第13回セザール賞監督賞と最優秀脚本賞、第45回カンヌ国際映画祭パルムドールにノミネート。1996年に、『そして僕は恋をする』で世界的な人気を獲得し、マチュー・アマルリックが第22回セザール賞有望若手男優賞に輝いた。2004年、『キングス&クイーン』で第61回ヴェネチア映画祭 コンペティション部門にノミネート。主役を演じたマチュー・アマルリックに第30回セザール賞最優秀男優賞をもたらした。2008年、『クリスマス・ストーリー』で第61回カンヌ映画祭に正式出品。第35回セザール賞で監督賞を含む9部門にノミネート。2022年、『私の大嫌いな弟へ ブラザー&シスター』で第75回カンヌ国際映画祭パルムドールにノミネート。現在もフランス映画界を代表する映画監督として活躍中。
取材・文: 香田史生
CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。
『映画を愛する君へ』
新宿シネマカリテほか全国順次公開中
配給:アンプラグド
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