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『映画を愛する君へ』アルノー・デプレシャン監督 映画に優劣は存在しない【Director’s Interview Vol.468】

© 2024 CG Cinema / Scala Films / Arte France Cinema/ Hil Valle

『映画を愛する君へ』アルノー・デプレシャン監督 映画に優劣は存在しない【Director’s Interview Vol.468】

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映画が好きな人であれば誰もが共感するであろう、映画へのラブレター。アルノー・デプレシャン監督作『そして僕は恋をする』(96)でマチュー・アマルリックが演じたポール・デダリュスの一代記の形をとり、デプレシャンの分身ともいえるポールの映画人生を描く。映画の誕生から現在に至るまでの名作の歴史と映画の魅力を語り尽くしたシネマ・エッセイ。アルノー・デプレシャン監督はいかなる思いで『映画を愛する君へ』を作り上げたのか。話を伺った。



『映画を愛する君へ』あらすじ

祖母に連れられて初めて映画館を訪れた6歳の時。14歳の時に16歳と偽って映画館に潜りこんだこと。学生時代の映画部での上映会。22歳の時、大学で映画を学んだ記憶。30歳になり人生の岐路に立つポールは、映画館でトリュフォーの『大人は判ってくれない』(59)を観て、評論家から映画監督に転身しようと決意した。


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映画への思いを聞いたインタビュー



Q:本作はデプレシャン監督の映画への熱い想いに溢れていました。


デプレシャン: 私はTVで流れる映画が大好きで、私にとってTVは非常に大切なもの。本作では小さな男の子がTVで映画を観ているシーンがありますが、私もそうやってTVから流れてくる映画から多くのことを学びました。アルフォンソ・キュアロン監督の『ROMA/ローマ』(18)という映画をNetflixで観ましたが、それは私の人生を変えるほどの衝撃でした。今はTVから配信へと時代が変わり、そこから得るものも増えてきています。もちろん映画館でしか得られないものもあります。それはやはりスクリーンの大きさでしょう。我々一人一人は小さな人生を歩んでいますが、映画館の大きなスクリーンに映し出される人生を体感することは、かけがえのないものだと思います。



『映画を愛する君へ』© 2024 CG Cinema / Scala Films / Arte France Cinema/ Hil Valle


Q:本作の合間にはドキュメンタリーのように老若男女問わず様々な人が映画への思いを語ります。撮影時にはどのようなコミュニケーションがありましたか。


デプレシャン:このシーンを撮るために、様々なバックグラウンドを持っている人たちを集めました。シネフィルの方だけではなく、エンタメ映画しか観ないような方にも出ていただき、カメラの前でそれぞれの思いを語って欲しかった。それを引き出すために、「映画館であなたの好きな座席はどこですか?」「何の映画を観て泣き、何の映画を観て笑いましたか?」「どんな映画があなたを豊かにしましたか?」「どんな映画を何回観ましたか?」など、多くの質問を投げかけました。


回答してくださった皆さんの話はとても面白かったので、映画の中では19分という長い尺を使っています。削除するのがもったいなくて短くするのが難しかったですね。


Q:彼らの言葉には、監督としていろいろな気づきがあったのではないでしょうか。


デプレシャン:彼らは本当に普通の人たちでその場で初めて会ってお話しするので、撮影はとても疲れましたね(笑)。そんな中でも、とある方の話がすごく印象に残りました。「今までで一番怖い映画は何でしたか?」という質問に対して、その方は『アルジェの戦い』(66)だと答えた。アルジェリアの紛争を経験された方だったんです。考えさせられるものがありましたね。





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