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『ヒプノシス レコードジャケットの美学』アントン・コービン監督 ヒプノシスが持つ強烈なアイデア【Director’s Interview Vol.475】

向かって左からオーブリー・“ポー”・パウエル、アントン・コービン (c)Anton Corbijn

『ヒプノシス レコードジャケットの美学』アントン・コービン監督 ヒプノシスが持つ強烈なアイデア【Director’s Interview Vol.475】

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ヒプノシスが持つ強烈なアイデア



Q:あなたが監督として手掛けてきた『コントロール』から『ディーン、君がいた瞬間(とき)』に至る作品群も興味深いですが、こうした劇映画と今回のようなドキュメンタリーでは監督としてのアプローチが異なりますか?


コービン:ドキュメンタリーの場合は、とにかく数多くのアーカイブ映像を調査しなくてはいけないし、それを自分の作品として見せることになります。その点に難しさがあります。初めてこういうドキュメンタリーを手がけましたが、映画に合う素材を探し出すのがすごく大変でした。そして、今回の映画はアーカイブ映像やインタビュー部分はモノクロにしました。過去と現在が共存している感覚を出したかったからです。それをカラーのアルバム・ジャケットと組み合わせました。アルバムのところだけ、カラーにすることで、デザインの力が際立つと思いました。


Q:ヒプノシスのデザイン感覚にはいまも驚かされますか?


コービン:ものすごく強烈なアイデアを持っていたことに驚かされます。ピンク・フロイドの「炎〜あなたがここにいてほしい」のジャケットには、炎に包まれた男が映っています。ものすごくクレイジーなアイデアですが、すばらしい効果を出していて、リアルに見えるところがすごいです。ポール・マッカトニーとウィングスのベスト盤は、エヴェレストに像を運んで雪の中で撮影されています。スタジオに塩を盛って撮ることもできたはずですが、それではつまらない。また、10ccのアルバムでは、長椅子に乗った羊をハワイで撮ろうと考えたわけですが、現地に行ってみると、羊もいないし長椅子も適当なものがない。そこで長椅子を作り、羊は大学の中で見つけてバリウムを飲ませて撮影したようです。実際にアルバムで使われた写真は小さいのですが、そのためにすごい労力を使ったわけです。



『ヒプノシス レコードジャケットの美学』(c)Hipgnosis Ltd


Q:信じられないようなアイデアも多いですね。


コービン:彼らにとって、それは冒険だったんです。私自身も冒険が好きです。だから、今も写真家を続けているのだと思います。細かく計画を立てるのではなく、その過程の中で発見していくことが好きです。


Q:ポーとストーム・トーガソンの視覚的な力のおかげで、音楽そのものも豊かに感じられますね。


コービン:視覚的な力と音楽が見事に合体しています。ピンク・フロイドやレッド・ツェッペリンは音楽の力が増しています。ピンク・フロイドのロジャー・ウォーターズとストームは友人同士だったのですが、ある時、仲たがいして口をきかなくなりました。どちらも頑固なキャラクターでした。ただ、死の直前に仲直りしていますし、彼はいまもストームに愛を持っています。ピーター・ガブリエルの場合は、ヒプノシスのデザインのおかげで作品の力強さが増していると思います。




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