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『TATAMI』ザーラ・アミール監督 敵と教え込まれたイスラエルの監督と映画を撮った理由【Director’s Interview Vol.477】

© 2023 JUDO PRODUCTION LLC. ALL RIGHTS RESERVED

『TATAMI』ザーラ・アミール監督 敵と教え込まれたイスラエルの監督と映画を撮った理由【Director’s Interview Vol.477】

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映画は芸術。テーマを強要したくはない



Q:あなたが共同監督となったことで、自身の役であるマルヤムの描き方も含め、どのようなアプローチがなされたのですか?


アミール:私は俳優業が専門ですから、役に入り込むのはいつもどおり。役を自分の肉体に完全に入れ込むわけです。でもこのような状況のイラン女性を演じる際は、共同監督という立場でたっぷり話し合いました。まずアスリートが第一線で競技に関わる時間は短いこと。しかも国の体制に左右されれば、競技人生を失いかねない。そこは当事国で育った私の理解が役立ちました。


Q:演じる立場として、マルヤムからレイラへの思いをどのように表現しましたか?


アミール:マルヤムはかつて国の命令に屈し、しかもその事実をずっと隠して生きてきました。そんな彼女が今、若いレイラの試練と一緒に向き合っている。しかも柔道は、対戦相手をリスペクトする競技であり、畳に上がったら、さまざまな思いを隠さなければなりません。この状況によって、マルヤムは心情が何層もある複雑なキャラクターになりました。10年前に失った人生をどうやって正しい位置に戻すのか。そのチャンスでどんな選択をするのか。何層もの表現をガイと相談しながら演じたつもりです。



『TATAMI』© 2023 JUDO PRODUCTION LLC. ALL RIGHTS RESERVED


Q:マルヤムやレイラの試練は、イラン独特のものなのですか?


アミール:いいえ。イランだけでなくエジプトなど他の国でも、アスリートが国の体制に左右される事例をよく聞かされています。


Q:本作が伝えるイランとイスラエルの対立関係は、どうしても現在のパレスチナとイスラエルの問題と重なってしまいます。映画を作り始めたのは、今回のガザへの侵攻前だとは思いますが……。


アミール:中東で育った私たちは、何十年も前からパレスチナとイスラエルの紛争を目にしており、目新しいことではありません。しかし“オクトーバー7”をきっかけに、その後、子供たちを含めた多くの人が殺害され、家が失われたことに、改めて目を背けられなくなったのも事実です。


Q:2023年10月7日、ハマスが率いる複数の武装組織によるイスラエル南部への攻撃のことですね。


アミール:はい。オクトーバー7以来、私たちが平和に向けたステップを踏むことがいかに重要かを思い知らされています。そう考えれば、『TATAMI』もそのステップということになるでしょう。本作の大きなテーマは、柔道とイラン女性の関係、そして政治が一般の市民の生活をどれくらい壊すかということ。この映画によって、スポーツと政治の関係を考えてもらえるとは思います。ただ一方で、私たちは本作を政治的な道具としてではなく、芸術として作り上げたのも事実です。




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