異業種のトップランナーが語る「ストーリーテリング」
Q:CGやゲーム、映画のクリエイターだけでなく、全く異なる職種の方、加賀で働いている方なども登壇されています。先生(スピーカー)はどのように選ばれているのでしょうか。
ルイス:音楽業界の方や飲食業界の方、俳優から棋士まで、可能であればもっと幅広く人を集めたいと思っています。私たちは当初から、すべての分野においてストーリーテリングは大切な存在だと言い続けてきました。ストーリーテリングとは、全く経験のない人の目からも、その世界を見ることができるものだから。
ただ、人を集めるプロセスはかなり難しい。私たちはCGやゲーム業界にはコネクションがありますが、今まで携わったことのない業界にはそれがありません。さらに難しいのは、その分野のトップを連れてきたいと思っていることです。
塩田:ストーリーテリングやモノ作りにおいて、THUのエコシステムの中で足りていない概念を作りたいというのがアンドレの希望でした。だからといって、脚本家スクールみたいなのは絶対やりたくないし興味もない。ただ、人を動かすものは物語であり、人が関わる全ての営みには物語性が絶対に介在している。特に匠の方々には、個々の分野に応じた物語のメソッドがあるはず。それを公開し合うことによって、お互いに持ち帰って高め合うというしくみにしたかったのです。
今年はたまたま「小島秀夫 × ジョージ・ミラー」という“事件”が起きて(笑)、盆と正月が一緒に来たような感じでエンタメ色が強くなりましたが、本来は、良い配分でいろんな人たちを集めようというのが発想の原点です。それによって参加者も多種多様になることを目的にしています。

中央)加賀市からのSensei、アーキビスト/キュレーターの明貫紘子さん。講演後、参加者は明貫さんと対話を重ねながら、洞察を深めていく。
Q:映画やゲームとは全然違う業界の人たちの話にも、ちゃんとストーリーテリングの要素が入っていることが面白く、そこには驚きと学びがあります。スピーカーの皆さんには詳細にオリエンされているのでしょうか。
ルイス:もちろんです。「あなたの業界でどのように自己表現しているのか。どのようにストーリーテリングしているのかについて話してほしい」と伝えています。皆さんすぐに理解してくれます。むしろ難しいのは、話を聴く側に「違う業界の先生の話から何が得られるのか」を納得させることですね。
塩田:違う業界の方々は「物語」という言葉を使っていない場合があります。でも皆さん何かしら「物を語っている」わけですから。「物語性とは何か?」と僕らの中でもよく議論になりますが、オリエン時の話から気づくものもありますね。
Q:テクニックではなく、もっと本質的なものを学べている気がしました。参加者の反応はいかがでしたか。
ルイス:理学療法士の方が参加されていたので、「どうして今回参加されたのですか、楽しめていますか」と聞いてみました。すると彼はこう言いました。「私の仕事の一部は、患者にリハビリの指示を出すことですが、彼らは信じなければ実行してくれない。その裏にあるストーリーをしっかりわかってもらえないと指示に従ってくれないのです」と。そして「私はアーティストではありませんが、今回のリトリートからは自分の職業においても得られるものがありました」と言ってくれました。
Q:日本人の参加者が今後増えるために、日本人に向けてTHUの魅力を教えてください。
ルイス:このイベントは翻訳体制がバッチリなので言葉の壁はありません。日本にいながら世界と繋がるチャンスです。違う考えの方、他業種の方との交流は成長の元になります。日本の方々にもぜひもっと参加してほしいです。
塩田:THUは言葉で説明してもなかなかわかりにくい。たとえば、THUに参加するために出張申請やセミナー受講申請を書くのは本当に難しいと思うんです(笑)。来てくださった日本人の方々は「これはもっと多くの人が参加すべき!来てみないとわからん」と口々に言ってくれています。その言葉を広めていって、出張申請の壁をなんとか変えていきたいですね 。
アンドレ・ルイス:THU創設者
デジタルアーティストやクリエイティブプロフェッショナルのための世界有数の革新的な体験を提供するTrojan Horse was a Unicorn(THU)の共同創設者、CEO。2013年、ルイスはこれまでとは違うやり方で、社会に貢献し、人々の生活に影響を与えたいという思いから、THU設立のアイデアを思いつく。インダストリアルデザインとマーケティングマネジメントのバックグラウンドを持つルイスは、デザイン、マーケティング、Web開発、コンピュータグラフィックスの分野でのキャリアを活かし、THUを通じてクリエイターのエンパワーメントに尽力する。THUは、世界中で複数のプロジェクトを展開し、クリエイティブコミュニティを支援しながら、デジタルエンターテインメント業界にも影響を与えているグローバル組織。
塩田周三:THUアンバサダー
上智大学法学部国際関係法学科卒業。1991年 新日本製鐡株式會社入社。1997年 株式会社ドリーム・ピクチュアズ・スタジオ立ち上げに参画後、1999年 株式会社ポリゴン・ピクチュアズ入社。2003年 代表取締役に就任し、海外マーケット開拓に注力。TV シリーズ制作や海外市場をターゲットにしたコンテンツ企画開発を実現する一方で、Prix Ars Electronica(オーストリア)、SIGGRAPH(米) 、アヌシー国際アニメーション映画祭(仏)などの国内外映像祭の審査員を歴任。2021年12月開催のSIGGRAPH Asiaではカンファレンス・チェアを務めた。2022年、第25回文化庁メディア芸術祭 功労賞を受賞。2023年、米国アニメーション専門誌Animation MagazineよりHall of Fame Awardを授与される。映画芸術科学アカデミー(AMPAS)会員。米国育ち、趣味はバンド活動。
取材・文: 香田史生
CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。
「THU 2026」ポルトガルにて開催!
日程:9/28 - 10/3 場所:ポルトガル トロイア
公式サイト/チケット購入:https://www.trojan-unicorn.com/main-event/thu-2026
THU 公式サイト:https://www.trojan-unicorn.com/ja/bootcamp/thu-storytelling-2025
THU インスタグラム(日本語):@thu_japan