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『プラダを着た悪魔2』、奇跡のような新作!【えのきどいちろうの映画あかさたな Vol.103】
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2026年GW映画としてはダントツに注目を集めている『プラダを着た悪魔2』(26)です。これは制作発表の段階からちょっとした騒ぎになりました。前作の公開が2006年ですから、何と20年経ってまさかの続編です。しかも、アン・ハサウェイ、メリル・ストリープ、エミリー・ブラント、スタンリー・トゥッチの主要キャストが全く同じ。いくら俳優さんには年齢がないといっても、肉体は確実に20年の歳月を刻んでますからね。大学出たてのジャーナリスト志望だったアンディ(アン・ハサウェイ)は40代の第一線になっている。前作は多くの女性観客を掴んだんですけど、話題になったのは最初、野暮ったかったアンディがトップファッション誌『ランウェイ』の現場で揉まれていくうち、むちゃくちゃお洒落に変貌していくんです。それは「新世紀の『マイ・フェア・レディ』」でもあるんだけど、『マイ・フェア・レディ』(64)のイライザ(オードリー・ヘプバーン)との違いは、アンディが働く女性だったことです。アン・ハサウェイにとってはまさに出世作と言えるでしょう。
20年後、アンディは夢を叶えています。ジャーナリストとして認められ、賞にも輝いている。ただ2026年の紙媒体は縮小・再編の嵐にさらされている。栄えある授賞式の会場でリストラ&チーム解体を(しかも、一斉メールで!)告げられた彼女はサバイヴを誓います。ちょうどそこに驚くべきオファーが舞い込むんですね。かつてキャリアをスタートさせた『ランウェイ』の特集ページを担当しないか。実は『ランウェイ』も危機に直面していました。アンディは古巣を救うべく、「プラダを着た悪魔=カリスマ編集長ミランダ」の棲む『ランウェイ』編集部に舞い戻ることになります。
で、なるほどなぁと感心したのが『ランウェイ』も以前の『ランウェイ』ではなくなっているんです。紙媒体の凋落はNYのトップファッション誌にも影を落としている。あんなに怖かったミランダが(おそらくはコストカットとコンプライアンスの両面で)だいぶ「悪魔」感を減らしている。まぁ、それでも感動の再会場面でアンディのことを全く覚えてないのが、さすがなんですけどね。だけど、20年後のミランダは着てきたコートを自分で職場のクローゼットに掛けようとするんです。ここは笑ったなぁ。前作では秘書のデスクに無造作に放り投げる(秘書がそそくさとしまう)のがお決まりだったでしょ。そういう細かいくすぐりがあるから前作は見てたほうがいいですね。直近では日本テレビの「金曜ロードショー」でも放映されました。

『プラダを着た悪魔2』© 2026 20th Century Studios. All Rights Reserved
僕は雑誌育ちのライターなので、この空気感はとてもわかります。『ランウェイ』のようなトップモードのファッション誌なら特にそうですが、かつては広告がむちゃくちゃ入ったんですね。広告が集まりすぎて、一冊に収まりきらず、掲載の順番待ちみたいなことになって、それで(その受け皿として)姉妹誌を創刊したりしていた。だから、編集部にはお金が潤沢にある。お金があるところには才能が集まってきます。トップモード、トップのカメラマン、トップのアートディレクター、トップモデル、トップのロケーションで時代をクリエイトしていた。そこにミランダは君臨していたんです。
それが紙の時代ではなくなった。広告費は紙媒体(&放送媒体)からネット媒体へと流れていく。『ランウェイ』には相対的に影響力を低下させます。まだファッション界のアイコン、ミランダがいるけれど、そしてその右腕、アートディレクターのナイジェルがいるけれど、もしかするとそれは「老舗の格式」のようなものでしかなくて、廃れゆくものかもしれない。という微妙な空気感をうまく映画にしています。まぁ、僕らはワシントンポスト紙が経営難で従業員の3割を解雇するという、想像を絶する時代に生きているんですよね。
だから、僕はミランダとナイジェル、メリル・ストリープとスタンリー・トゥッチの演技に見入りました。一時代を築いてきたプライドがあって、プロフェッショナルなスキルやセンスがあって、それでも自分の時代が終っていくのかもしれないと心のどこかで思っている人の内面です。その諦めも、その勇気や強さも、じわっと伝わってくる、いい芝居するんですよ。メリル・ストリープは看板通り「悪魔」であって、かつ弱みを抱えた人間でもあるという難役を見事に演じきりました。
文:えのきどいちろう
1959年生まれ。秋田県出身。中央大学在学中の1980年に『宝島』にて商業誌デビュー。以降、各紙誌にコラムやエッセイを連載し、現在に至る。ラジオ、テレビでも活躍。 Twitter @ichiroenokido
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『プラダを着た悪魔2』
公開中
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
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