©2025 Pallas Film-Twenty Twenty Vision-View Master Films-ZDF
『雌鶏』パールフィ・ジョルジ監督 映像を通して、観客と誠実に対話する【Director’s Interview Vol.590】
人間を撮るように、ニワトリを撮る
Q:ニワトリの目線の高さに合わせたカットが新鮮でした。ニワトリを追う撮影や画角作りは大変だったのではないかと想像しますが、いかがでしたか。
ジョルジ:古典的な映画では、カメラの位置はたいてい俳優の目線よりも低い位置にあります。それが、観客にとって馴染み深いアングルなのです。本作の撮影において最も困難だったのが、ニワトリの目線よりも低い位置にカメラを配置するには、どうしたらいいかということ。いかにして、人間を撮る時のようにニワトリを撮るのか。それが技術的課題の一つでした。
そのために、撮影に向けて様々な計画を立てました。最初は、地面に近い位置でニワトリを追跡できるよう、特殊なカメラ用車両を製作しました。しかし、全く上手くいかなかった。映画の中でその特殊車両を使って撮影されたカットは1つだけで、それ以降は使用しませんでした。
次に、ローアングルで撮影できるステディカムを試しました。ニワトリの体高は20~40センチ程度なので、地面スレスレまで近づけるステディカムなら理想的なアングルで撮れるのではないかと考えたのです。しかし、ステディカムには独特の「ボートのような揺れ(フローティング感)」が生じてしまい、完全に固定された映像にならない。ステディカム自体は本当に素晴らしいカメラで、手持ちカメラで撮ったような雰囲気の映像を撮るなら最適なのですが…。「往年のハリウッド映画のように物語を語る」という私の構想には不向きでした。

『雌鶏』©2025 Pallas Film-Twenty Twenty Vision-View Master Films-ZDF
最終的な解決策は、非常にシンプルでした。ペリスコープ・レンズ(プリズムを用いて光を90度屈折させ、レンズとセンサーを直角で配置可能にする、潜望鏡のようなレンズ)を使ったのです。長いレンズの先端に実際の撮影用レンズを取り付ける仕組みで、通常のレンズと同じように撮影できました。
しかし、依然として撮影には困難が伴いました。ペリスコープ・レンズを用いた結果、撮影監督は常にカメラを覗き込み、下を向いて操作しなければならなかったのです。下を向いたままの撮影では、カメラをパンする際に緻密な操作が必要となる。ニワトリの目線より低い位置で撮るという課題は解決したものの、今度は「古典的な手法でパンを行う」という別の難題に直面しました。
それはある意味、不可能に近いことでした。しかし、撮影監督のヨルゴス・カルヴェラスが素晴らしい手腕を発揮し、手作業でのパンを実現してくれた。彼の努力により、あのような素晴らしい画を撮ることができたのです。