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『雌鶏』パールフィ・ジョルジ監督 映像を通して、観客と誠実に対話する【Director’s Interview Vol.590】

©2025 Pallas Film-Twenty Twenty Vision-View Master Films-ZDF

『雌鶏』パールフィ・ジョルジ監督 映像を通して、観客と誠実に対話する【Director’s Interview Vol.590】

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奇想天外な発想と芸術性が高く評価され、2025年のトロント国際映画祭にて特別賞を受賞した『雌鶏』。古典ギリシャ悲劇における「運命の残酷さ」をベースに生み出された本作は、ニワトリを物語の中心に据え、その視点を通して人間社会の不条理を炙り出すことで、コミカルかつシニカルなトーンを兼ね備えた稀有な作品に仕上がっている。


CGをほとんど使わずに撮影された本作の映像化を可能にしたのは、2ヶ月間にわたる動物たちへの「教育」。動物を撮ることの困難に挑みつつ、言葉を発さないニワトリの視点を通して描きたかったものとは。パールフィ・ジョルジ監督に話を伺った。



『雌鶏』あらすじ

養鶏場で生まれ育った雌鶏が、出荷用トラックから脱走!人生初の自由を手に入れた彼女は、刺激と危険に満ちた世界を走り抜け、ワケあり一家が暮らす家へと辿り着く。庭に建つニワトリ小屋で新生活を送るなか、初恋を知り、初めて産んだ卵を温め育てようと決意する。ところが大切な卵は人間に回収されてしまう過酷な現実に直面。人生とは?生きるとは?我が子がヒヨコになる日を夢見て前に進もうとする彼女に、思いがけない運命が待ち受けていた──。


Index


撮影を可能にした2ヶ月間の「教育」



Q:雌鶏を主演にしようと思ったきっかけを教えてください。


ジョルジ:一見すると動物の物語に見えるかもしれませんが、この映画は人間についての物語です。物語の核となるのは人間であり、主人公の男は道徳的な決断を迫られ、逃げ場のない状況に追い込まれています。


ギリシャでの撮影を決めた時点で、私たちは人間の物語に古代ギリシャ悲劇の構成を取り入れようと考え、そこに、ニワトリを登場させることにしました。ニワトリは、いわば「もう一つの視点」を象徴する存在であり、人間たちの物語を外から見つめる役割を担っています。


物語の序盤に注目すると、ニワトリと男のバディ・ムービーのように見えるかもしれませんが、実際はそうではない。私は二つの異なる物語を構築したかったのです。一つはハッピーエンドを迎えるニワトリの物語、もう一つは悲劇的な結末へと向かう人間の物語です。この二つの筋書きは、移民問題や人身売買といった、人類が直面する大きな課題を軸に、物語の中盤で交錯することになります。



『雌鶏』©2025 Pallas Film-Twenty Twenty Vision-View Master Films-ZDF


Q:ニワトリたちにとって、初めての映画撮影はとても緊張する時間だったのではないかと思います。彼女たちの緊張感をほどき、リラックスできる環境はどのように作られたのでしょうか。


ジョルジ:非常に嬉しい質問です。それこそが、まさに私たちが解決すべき最大の課題でした。『ミッドサマー』(19)、『哀れなるものたち』(23)などに携わってきたアルパード・ハラシュという非常に優秀な動物トレーナーがいるのですが、撮影の2ヶ月前から彼のチームがニワトリたちと関わってくれていたのです。その期間はキャスティングも兼ねていて、彼らは今回の役にぴったりのニワトリを選び出してくれました。


同時に、その2ヶ月は「教育」の期間でもあり、映画全体を通して最も重要な時間でした。アルパードたちは動物にとって安全で優しい環境を整え、ニワトリたちが人間から好意的な扱いだけを経験できるようにしてくれました。その結果、犬や馬と同じように、ニワトリたちは人間に対して親しみを持つようになりました。人間にとって非常に優れたパートナーとなったのです。人間が何かを求めれば、それに応じる姿勢を見せてくれる。近づくと逃げ出してしまうような、訓練されていないニワトリとは大違いでした。


ニワトリたちは自ら人間に歩み寄り、一緒に歩くこともありました。撮影現場には50~60人もの人々がいたのですが、彼女たちにとってはそれが日常になっていたのです。ニワトリたちは臆することなく、私たちと心を通わせてくれました。


あの2ヶ月間の教育や安全な環境作りがなければ、この映画を作ることはできなかったと思います。撮影期間中も同じように、スタッフ全員がニワトリたちに意識を集中し、細心の注意を払って行動していました。そのため、本作の現場は世界中のどの現場よりも穏やかな雰囲気だったと思います。誰かが大声を出したり、急に動いたりすると、撮影が成立しなくなってしまいますから。監督である私にとっても、全員の意識がニワトリたちに向いていたおかげで、通常の映画制作よりもずっと撮影が進めやすかったです。




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