©2025 Pallas Film-Twenty Twenty Vision-View Master Films-ZDF
『雌鶏』パールフィ・ジョルジ監督 映像を通して、観客と誠実に対話する【Director’s Interview Vol.590】
言葉を使わず、観客と誠実に対話する
Q:動物が人間の言語を話す形で描く映画はたくさんありますが、本作では動物にセリフを当てなかったことで物語に深みが増し、より魅力的な映画になっていると感じました。『ハックル』(02)でもセリフを削った物語を描いていますが、セリフを当てない姿勢にはどのような思いがあるのでしょうか。
ジョルジ:人間の言葉や会話は、何らかの形で真実を覆い隠してしまっていると私は感じています。それも、いとも簡単に真実が覆い隠されてしまう。人は、口を開けばたいてい嘘をついていると言えるのかもしれません。決して悪気はなく、無意識にそうしているのでしょう。

『雌鶏』©2025 Pallas Film-Twenty Twenty Vision-View Master Films-ZDF
私たちはそうやって、世界を自分たちなりに捉え直そうとするものです。それ故に、自分の言葉を嘘とは呼びたくないし、単なる解釈の違いだと思うことがある。私にとっては、会話そのものが互いの主張をぶつけ合う戦いのようなものであり、どこからが嘘になるのか分からないのです。
だからこそ、言葉を多用したり、真実を覆い隠したりすることは避けたいと考えています。嘘と言うと語弊があるかもしれませんが、言葉は事実を加工してしまうもの。言葉による修飾や意味の改変を介さず、映像そのものや、そこで起きている状況を通して語りたいのです。明確な状況を見つけ出し、提示することで、観客と誠実に対話する。それが私の目指すところであり、その過程において、言葉は時に邪魔な存在になってしまうのです。

監督/脚本:パールフィ・ジョルジ
1974年4月11日ブダペストで生まれ。ブダペスト演劇映画アカデミーを卒業したパールフィは、視覚的に独創的でジャンルにとらわれない作品で知られ、国際的に高い評価を得ている。彼のデビュー作である長編映画『ハックル』(2002)は、彼を現代ヨーロッパ映画界における独自の存在として確立させ、その後、大胆かつシュールな『タクシデルミア ある剝製師の遺言』(2006)は第59回カンヌ国際映画祭のある視点部門にて上映され話題となった。そして実験的なコラージュ映画『ファイナル・カット 』(2012)が続いた。彼の多彩なフィルモグラフィーには、『フリー・フォール』(2014)、第32回東京国際映画祭のコンペティション部門で上映された『ヒズ・マスターズ・ヴォイス』(2018)「Perpetuity」(2021/未)、そして「One Will One Nation」(2016)などのVRプロジェクトも含まれている。パールフィの作品は、フィクション、ドキュメンタリー、実験的な形式を融合させることが多く、映画的ストーリーテリングの境界を常に押し広げている。
取材・文:藤原亮太
CINEMOREの編集部員兼ライター。95年生まれ。西川美和『永い言い訳』をきっかけに映画好きに。近年は、エドワード・ヤン、ジョン・カサヴェテスの映画に夢中。日本のインディペンデント映画を盛り上げていくために日々奮闘中。
『雌鶏』
9月25日(金)シネマート新宿、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開
配給:ハーク
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