誰にも気づかれないようなVFX
Q:西川監督のこれまでの作品と比べると、今回はVFXの量がかなり多いと思いますが、監督は事前に絵コンテなど描かれていたのでしょうか。
上田:今回は描かれていました。ただ、VFXのための設計図というよりは、役者のお芝居をどう撮っていくかを中心に据えたコンテでした。
Q:監督からVFXのコンセプトや具体的なリクエストなどありましたか。
上田:特段細かなリクエストはなかったのですが、脚本を読んだ上で「誰にも気づかれないようなVFXがいいですね」と僕からお話したところ、監督も「それはすごくいいですね」と。僕らとしても、世界観にどれだけ馴染ませるかに注力して、VFXだと気づかれないくらいが丁度いいと思っていました。

『わたしの知らない子どもたち』メイキングシーン ©︎2026 K2 Pictures・AOI Pro.
Q:戦後の焼け跡と昔の電車が走るシーンはVFXかと思いましたが、物語に没入していたこともあって、それ以外はどこがVFXかは気づきませんでした。
上田:かなり自然に馴染ませたので、分からないところは多いと思います。
Q:VFXを多用する作品をあまり撮られていない監督の場合、VFXの関与度の違いはあるのでしょうか。
上田:全然違いますね。今回は、ロケハンの段階から、監督、キャメラマン、美術、照明などの各部署と、その場で話し合いながら進めていくスタイルをとったため、できるだけ監督にストレスをかけないスムーズなアプローチができたのではないかと思います。
Q:VFXが得意な樋口真嗣監督や庵野秀明監督と西川美和監督では、具体的にどういったところが違いましたか。
上田:樋口監督や庵野監督は、まず「VFXありき」で画面や構成を考えることが多いのですが、西川監督は「現場でのお芝居」を中心に据えて考えられます。そこが大きな違いですね。アプローチは異なりますが、どちらもVFXの正しい使い方だと思います。