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『わたしの知らない子どもたち』VFXスーパーバイザー:上田倫人 目指したのは誰にも気づかれないVFX【Director’s Interview Vol.599】

『わたしの知らない子どもたち』VFXスーパーバイザー:上田倫人 目指したのは誰にも気づかれないVFX【Director’s Interview Vol.599】

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VFXは職人の手作業の積み重ね



Q:SF大作を手掛ける時と、本作のような作品を手掛ける時とで、気持ちの面から技術的な面まで違いはありますか。


上田:西川監督のチームは、これまでVFXを多用してきたチームではないので、現場でより丁寧に説明することは心掛けていました。あとはやはり「VFXと気づかれないために何をするか」ということに尽きると思います。リアリティのラインや質が違うんです。例えば、ゴジラやウルトラマン、仮面ライダーが出てくる世界のリアリティと、本作の琴子がいる世界のリアリティは少し違うもの。目指すところも違ってくる。キャラクターが存在すること自体がフィクションであるSFに対して、琴子の世界はより史実に根付いている。ただ、それでも結局のところ根本は一緒なのかもしれません。色々なものを調べて「どこをリアルにするか」という取捨選択のラインが違うだけなのだと思います。


Q:今のVFXは何でも出来てしまう印象がありますが、それでも現場で「それはちょっと難しい」「結構大変なことになる」といった場面に直面することはあるのでしょうか。


上田:いっぱいありますね(笑)。実は一番慌てたのは、琴子が海に沈んでいくシーンです。あのシーンでは琴子役の小八重さんが鼻栓をしているのですが、周りに水泡がたくさんあるので、その鼻栓をCGで消すのがすごく大変でした。そのため、鼻の描写のためにCGの琴子を作る必要があり、予定していなかったのですが小八重さんを急遽3Dスキャンしました(笑)。そして、その鼻を置き換える作業をしました。これは結構大変でしたね。


Q:そういった判断は誰が下すのでしょうか。


上田:元々は「現場で鼻栓を外せるかもしれない」という話だったのですが、狙ったアングルで「あ、これ無理だね」となってしまった。でも監督は「この画が撮りたい」と強く切望していたので、その場で頭をフル回転させて、じゃあスキャンして鼻をCGに置き換えようと。僕は3Dスキャナーを持っているので、コストをかけずにスキャンできて、それに加えて水泡があるので力技でゴリゴリとコンポジット(合成)ができる大久保榮真というスタッフがいたからこそ実現できたのだと思います。その条件が揃っていなければ、普通にやったら大変なコストになってしまう作業で、このチームでなかったら実現はかなり難しかったと思うカットです。


Q:メイキング映像に、昔のビルディングが建っている街中のシーンがありました。一定の階以上はCGで足しているのかと思いますが、既存の建物かどうかも分からないほど自然でした。


上田:基本は既存の建物を使用しています。「どこまでだったら誤魔化せるか」「どこまでカロリー(作業量)をかけすぎずに最大効果を得られるか」というバランスを狙って作っています。実はその場所は撮影でよく使われる見慣れたロケ地なので、「そこにプラスしてVFXで何が出来るか」を考えました。そこでも、最終的には笠松さんがアングルを決めてから私たちがジャッジするという流れです。


よく使われる場所なので、さらに一段上のクオリティーを目指すために、「ここはどうしてもこれをVFXでやらせてほしい」とチーム内にお願いしたのは、走っている電車をCGで置き換える処理。実はこれ、最初に見せた時は監督も気づいていなかったんです。現場も本物の電車を走らせて撮影したのですが、よりクオリティの高い画面にするために差し替えました。合成チェックの時に監督が「わぁ、すごーい」と感心して、そのままOKになりそうだったので、「監督、これ、電車がCGに置き換わってるんですけど」と伝えたら「あ、ホントだ!気づかなかった!」と驚いていました(笑)。それくらい生っぽくリアルに仕上がりましたね。


Q:質感をそこまで追い込んでいくと、もはやCGかどうか全く分かりませんね。それはCGソフトがそのように進化しているからなのですか。


上田:いえいえ! ソフトが勝手にやってくれるわけではありません(笑)。基本的にはコンポジットや合成が上手い職人が手作業でやっているのですが、それでも一発で決まるわけではなく、少しずつクオリティを上げていくしかありません。見る人によって感覚も違うので、そこはメインでジャッジしている4人で話し合いながら調整していきました。


Q:完成した作品をご覧になった印象はいかがでしたか。


上田:個人的にもすごく好きな作品になりましたし、自分の中でも非常に大切な作品になったと思っています。


Q:最後に、上田さんが影響を受けた好きな映画を教えてください。


上田:今回の作品とは全然違うジャンルになっちゃうのですが(笑)。一番好きな映画は『2001年宇宙の旅』(68)ですね。そこから一番ものづくりの影響を受けました。


Q:『2001年宇宙の旅』のように、ミニチュアや特撮といった手法も作品によっては今でも取り入れるのでしょうか。


上田:私は元々特撮出身ですし、『新幹線大爆破』(25 Netflix)などでも特撮を使っています。助監督の経験もあるので、できるだけ「現場」をメインに考えています。VFXの仕事だとしても、できるだけ本物を使いたい。ドローンを飛ばしたり、合成素材を実写で撮ったりするなど、そういったアナログな手法の引き出しはいっぱい持っているつもりです。できるだけ生のものを使う。実写で撮影する方を選ぶようにしていますね。





VFXスーパーバイザー:上田倫人

VFXスーパーバイザー。在学していた早稲田大学大学院の授業で、樋口真嗣監督、尾上克郎監督と出会い、映画の道へ。是枝裕和監督作『ルックバック』(26)、庵野秀明監督作『シン・ゴジラ』(16)『シン・仮面ライダー』(23)、『シン・ウルトラマン』(22/監督:樋口真嗣)などに参加



取材・文: 香田史生

CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。


撮影:青木一成




『わたしの知らない子どもたち』

全国公開中

配給:K2 Pictures

©︎2026 K2 Pictures・AOI Pro.

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