アニメーターが不得意な「反応」は俳優の演技を参考に
Q:俳優に動いてもらったのは、あなたの作品で初めて「登場人物のセリフが多い」という点も関係したのではないですか。
ショメ:多くのキャラクターがテーブルを囲んで会話したりしますからね。その際、各キャラクターを担当した俳優たちには、自然な演技を要求しました。あるキャラクターが話している間、他のキャラクターがその話を聞いて反応を示すわけですが、そうした動きの表現をアニメーターは得意としていません。通常は話しているキャラクターの動きだけに集中しますから。俳優を起用することでアニメーターも“反応”を学び、独特の表現が生み出せたと思います。

『マルセル&ムッシュ・パニョル』© 2025 WHAT THE PROD - MEDIAWAN KIDS & FAMILY CINÉMA – BIDIBUL PRODUCTIONS - WALKING THE DOG
Q:さらに今回は、まるで俳優が演じる“舞台”を眺めているような、固定したアングルも多用されます。まるで舞台中継の映像で、これはアニメとしては異例ですね。
ショメ:そこは意図的な演出です。パニョルの人生は“演劇の時代”と“映画の時代”に大別できます。前半部分で演劇人の彼が映画について話すシーンでは、カメラをできるだけ動かさず、クローズアップも使わず、点描画のごとく広い構図でワンショットで捉えました。そのような演出から、舞台を眺めているような感覚になるはずです。その後、映画が演劇に何をもたらすのかパニョルが説明し始めると、カメラが横移動でパンしたり、劇場の外に出たりします。つまり演劇の世界から映画の世界へ移ることを、映像表現で示したのです。
Q:長編の全編をデジタルで完成させたのは本作が初めてとか。
ショメ:私がアニメーションの制作を始めた頃はデジタル技術が登場したばかりで、多くの人が使い勝手がよくわからず、紙やセル画のアナログが主流でした。私が初めて導入したデジタル技術はPhotoshopで、だんだんと紙に描いたような風合いも表現できるようになったのです。そして今回は紙を一切使わない作品になりました。ずいぶん制作時間は短くなったのですが、今後はAIによってさらなる時間短縮が望めるでしょう。生成AIのようなすべてを任せる使い方には断固反対しつつ、着色や中割り(画と画のつなぎのカット)といった機械的な作業にAIは有効なはずです。生成AIは単なるおもちゃ。芸術を創造するのは人間で、AIに人間が“使われる”ようになったらおしまいですから。