怪獣の目線に人間を配置する
Q:怪獣の巨大さを感じさせるアオリのショットが多く、恐怖とスケール感を強く感じる一方で、全身が見える俯瞰のショットとの切り替えも印象的でした。その使い分けにおいて意識された点はありますか。
山崎:ずっと同じようなフレーミングが続くと、観ている方の緊張感が無くなってくる。良きタイミングで全体の状況が分かるショットを挟むようにしています。怪獣たちが本格的に戦い始めると、一種のアクション映画になりますよね。そこで、怪獣に寄った臨場感のあるカットと、今どういう戦況になっているのかを説明する引いたカットをうまく織り交ぜています。引いた画がいいバランスで入ってくることで、全体の戦いを理解しながら、恐怖も迫力も味わってもらう。そこのバランスを目指しながら作っていきました。
今回特にこだわったのは、「怪獣たちの目線に人間を配置する」ということ。だから、高い場所に人を置いたりしました。例えば飛行機に乗っている時は、怪獣と目線が合うタイミングが生まれてくる。特にキングギドラは、怪獣の中では稀有な存在で、人間と同じ高さまで目線を下げることができるんです。それで、キングギドラの顔だけが人間に襲いかかってくるようなシーンを作りました。しかもワンシーンワンカットで撮ったので、長い時間キングギドラに追いかけ続けられるという(笑)。それって、人間がまだ猿だったころの恐怖感とリンクすると思うんです。木の上にいて俯瞰していればまだ生きていられるけれど、木から降りて地面を歩いている時に猛獣と目が合ったらもう逃げられない。それが原始的な恐怖に繋がるんじゃないかなと。目線を合わせることはすごく意識しましたね。
前半の飛行機で逃げ惑うシーンでも、飛行しているキングギドラはずっと同じ高度にいて逃がしてくれません。作戦本部をあえて高い場所に設定したのも、怪獣と目線を合わせるため。そうすることで、恐怖を倍増してくれるんじゃないかなと。

『ゴジラ-0.0』ⓒ 2026 TOHO
Q:怪獣のマクロな視点と、敷島(神木隆之介)や典子(浜辺美波)、野田(吉岡秀隆)、村上教授(田中泯)ら人間のミクロな視点をひとつの映画として構成していく上で、どんなことを意識されましたか。
山崎:そこはもう「絶対に分離してはいけない」と強く意識していました。ゴジラやキングギドラの存在に対して、人間がどう関わっていくか。ただ単に「怪獣が来て人間たちが困っている」様子を描く映画ではなく、その巨大な災厄の中に、人間が直接介入できる要素をどれだけ作り込めるか。それがストーリー構築において、皆で最も頭を悩ませた部分でした。
やはり、「ただの怪獣同士のVSもの」にはしたくなかったんです。人がゴジラに関わり、人がキングギドラに関わる。その関わりの中でどう物語が展開していくのかを、最後まで息切れせずに描き切ることが重要でした。とはいえ、相手はデカい怪獣なので、少しでも気を抜くと簡単に人間ドラマと怪獣のパートが分離しちゃう。その中で人間ができることは何なのかを、あらゆることに気を配りながら考え抜きました。人間が怪獣たちの戦いにどう介入していくのかが大きなテーマでしたね。
Q:今回は怪獣と個人の関係性が多かった印象もあり、そこも面白かったです。
山崎:怪獣がデカいことは、怪獣映画を作る時の一番の問題点だと思うんです。人間と同じ等身大のキャラクターであれば、ドラマの中に組み込むのはさほど難しくはないと思いますが、巨大な存在がやって来て怪獣同士で戦い始めてしまうと、人間はもうお手上げになっちゃう。その時に、人間と怪獣の間に何らかの「縁」を結んでおかないと、ただの怪獣たちだけの物語になってしまう。両者をどう接着するかについては、すごく苦心して考えました。