ゴジラの歴史の韻を踏む
Q:VFXが関わってくる現場演出において、留意されていることなどはありますか。
山崎:最近はカメラの動きを追尾できるソフトがかなり進化してきているので、そこは少しリミッターを外しています。遠くの風景も何もかもが「普通にそこにあるもの」として、(合成用のブルーバックの前で)カメラにはある程度自由に動いてもらいます。でも後で大変なことになるんですけどね(笑)。
例えば、和光の屋上に設けた作戦本部のシーン。あそこは人物が同じ場所にとどまって会話や行動をするため、カメラが動いていないと画がもたないんです。アクティブなカメラワークにしておく必要があったため、テクノクレーンを使ってカメラをブンブン振り回して撮影しました。それはつまり、建物の背景が抜けている部分は、銀座の街並みが全部見えているということだから、そこをすべてCGで作ることを意味する。もう、アホみたいに大変でしたね(笑)。
でもそのおかげで、人間のすぐ近くで怪獣の戦いが繰り広げられていて、いつその影響が及んでくるか分からないという恐怖感や、ゴジラやキングギドラを人間の目線から俯瞰できる良さが生まれました。地上での人間の振る舞いと、上空からの視点がしっかりと両立できたんです。こういうものは、やり切った時にはすごく良い映像になるんですよね。ただ、やり切るまでが本当に大変で……(苦笑)。カメラをフィックスして撮れば、背景は1枚の画で済むのですごく楽なんですよ。でも、フィックスのまま話が進んでいくことはどうしても避けたかった。結果的に結構な勢いでカメラを振り回すことになりましたが、スタッフのみんながよくついてきてくれました。

『ゴジラ-0.0』ⓒ 2026 TOHO
Q:前作『ゴジラ-1.0』(23)のときは『JAWS/ジョーズ』(75)のオマージュのようなショットも話題になりましたが、今回も意識されたものはありましたか。
山崎:どうしてもオマージュになっちゃうんですよね(笑)。そこはぜひどんどん発見してくださいって感じです。
ただ、今までのゴジラ映画が培ってきた文脈、過去のゴジラ映画の「韻を踏む」ということは意識的にやっています。例えば、以前、生頼範義さんがポスター描かれていた、ゴジラにキングギドラが巻きついているような大迫力のビジュアルって、実際の映画の映像としては実現していなかった部分がありましたよね。それが現代のデジタル技術なら映像化できる。あるいは、キングギドラと言えば神社の向こう側に降り立って神社を破壊する、みたいなことは絶対にやりたかったですし、松本城の上空をただ通過するだけでなく、しっかりと城の上に乗っかって壊してもらいました。「やっぱり城に来たら壊してくれよ」(笑)と思うじゃないですか。
そういった、これまでのゴジラ映画が積み上げてきた歴史や文脈を、できるだけ「韻を踏む」形で映像化していく。それは非常に良いアプローチだなと思い、積極的に取り入れています。本作はまさに、ゴジラの歴史の韻を踏んで作っています。

監督/脚本/VFX:山崎貴
1964年、長野県松本市生まれ。幼少期に『スターウォーズ』や『未知との遭遇』と出会い、強く影響を受け、特撮の道に進むことを決意。阿佐ヶ谷美術専門学校卒業後、1986年に株式会社白組に入社。『大病人』(93)、『静かな生活』(95)など、伊丹十三監督作品にてSFXやデジタル合成などを担当。2000年『ジュブナイル』で監督デビュー。CGによる高度なビジュアルを駆使した映像表現・VFXの第一人者。『ALWAYS 三丁目の夕日』(05)では、心温まる人情や活気、空気感を持つ昭和の街並みをVFXで表現し話題になり、第29回日本アカデミー賞最優秀作品賞・監督賞など12部門を受賞。『永遠の0』(13)、『STAND BY ME ドラえもん』(14)は、それぞれ第38回日本アカデミー賞最優秀作品賞ほか8部門、最優秀アニメーション作品賞を受賞。また、監督・脚本・VFX を担当した『ゴジラ-1.0』(23)では、第96回アカデミー賞®で日本映画初の視覚効果賞受賞を果たした。日本を代表する映画監督の一人として数えられる。
取材・文:香田史生
CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。
撮影:青木一成
『ゴジラ-0.0』
全国劇場にて公開中
配給:東宝
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