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時代と家族の関係性の中に立ち上がる物語。菊地健雄監督『体操しようよ』【Director’s Interview Vol.11】

時代と家族の関係性の中に立ち上がる物語。菊地健雄監督『体操しようよ』【Director’s Interview Vol.11】


笑いや感興を生むカッティング



Q:映像編集の部分で面白かったのは、序盤の道太郎と妹(余貴美子)との会話と、パン屋でアルバイト中の弓子と同僚との会話をクロスカッティングで対比させるシークエンスや、ラジオ体操後の会話から葬式の場面に切り替わるマッチカットなど、笑わせる台詞や演技ではなく、カッティングでおかしさやユーモアを生み出していた点です。そのあたりは今回こだわった部分でしょうか?


菊地:デビュー作の『ディアーディアー』から一貫して取り組んでいることですが、映画という形式である以上、画面に映る分かりやすいものの内容で笑わせるというよりは、映像の連鎖だったり画面の配置構成の中で観客にある感情を呼び起こしたりすることができないかなと。それがあまり技巧に走りすぎるとお客さんも乗り切れないでしょうが、お客さんからどういう風に見られるかを考えながら、また過去の名作から使えるものを参考にしながら毎回いろんなやり方を試し、挑戦している感じはありますね。映画の文法で何が語れるかということを製作中は絶えず意識しています。



Q:のぞみが最初にラジオ体操に参加した時のことを神田会長が思い出す場面で、海を映す映像をパンして回想に切り替えるショットも印象的でした。あのシーンは合成でしょうか?


菊地:厳密に言うと合成ではなく、現在と回想のショットを、大体のサイズ感を揃えて2回に分けて撮って、パンののりしろをディゾルブで編集しています。回想の入り方って毎回難しいなと思っていて、というのもだいたい回想というのは説明的になってしまうからです。映画は時間が行ったり来たりすることを表現できるのですが、今回はある種同時並行的に時間が流れているかのように、いかにワンカットで現在から過去に接続できるかを挑戦しました。ワンカットで撮るということは、時間が寸断されずに見えるということですから。台本上は回想を語っている神田会長の言葉によって思い出している構成になっているけれど、映像的には傍らにいる道太郎の目の前で過去の出来事が今まさに起こっているような効果を狙っています。


 つまり仕上がりをワンカットに見せることで、2つの時制が同時間で流れているように見せたかったのです。カッティングを通じて過去と現在をひとつに結びつけたい、そういうギャップの中で感情が生み出されることがあると思います。映画ならではの映画にしかできない表現のあり方というのがきっとあるはずで、(菊地監督の4作品すべてに参加している)撮影の佐々木靖之さんと毎回新しいことに挑戦しつつ、観客の方が飽きずに、気持ちを途切れさせることなく「この後どうなっていくんだろう」と作品世界に深く入っていけるように、といったことを考えながら作っています。




Q:映画の中の時間と記憶のコントロールというのは、菊地監督が映画表現で追求しているテーマのひとつになっているのでしょうか。


菊地:脚本の内容にもよりますが、たとえば『ディアーディアー』と『ハローグッバイ』では回想を禁じ手にして、回想とナレーションは一切使いませんでした。ただ、毎回それだと限界があるので、発想を変えて回想を単なる説明的なシーンとして撮らないために、人の記憶で実際に起きるフラッシュバック、脳内で映像が再生されるような瞬間を映画の中でどうしたら表現できるのか、それを追求したいということなのかもしれません。記憶を再現することは過去に大勢の監督たちもやってきていますが、それを自分も引き継いでいきたいです。



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