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時代と家族の関係性の中に立ち上がる物語。菊地健雄監督『体操しようよ』【Director’s Interview Vol.11】

時代と家族の関係性の中に立ち上がる物語。菊地健雄監督『体操しようよ』【Director’s Interview Vol.11】


 12年の助監督時代を経て、2015年の『ディアーディアー』で長編監督デビューを果たした菊地健雄監督。監督の故郷である栃木県足利市を舞台に、桐生コウジ、斉藤陽一郎、中村ゆりが幼少期の苦い過去にとらわれた三兄妹を演じた同作は、モントリオール世界映画祭に正式出品されたことでも話題を呼んだ。その後も、萩原みのりと久保田紗友が演じる女子高生2人がもたいまさこ演じる認知症のおばあちゃんに出会う『ハローグッバイ』(2016)、湊かなえ原作で貫地谷しほり、木村多江、大東駿介、緒形直人らが出演した『望郷』(2017)と、コンスタントに好作を発表し着実にスケールアップしている印象の菊地監督に、最新作『体操しようよ』について聞いた。


Index


企画の成り立ちとキャスティング



Q:最初に、『体操しようよ』の企画の成り立ちから教えてください。


菊地:プロデューサーで脚本にもクレジットされている春藤忠温さんがラジオ体操会に通われて、そこで体験したことがこの作品の出発点です。春藤さんが最初に脚本を書き、共同脚本で和田清人さんが加わり、草刈正雄さんの主演が決まっていました。草刈さんがラジオ体操というのが、まず面白いなと。その時点ではもっとコメディよりの展開でしたが、僕が参加してからは、家族のドラマを強化していく方向になりました。たとえば主人公の佐野道太郎については、もともと奥さんが生きている設定だったのを、奥さんに先立たれて親一人子一人という設定に変えて、それを軸に脚本を煮詰めていきました。


 定年退職した男がラジオ体操を通じて地域と繋がっていく、それが春藤さんの一番やりたいことでしたが、一方で、人が生きていくうえでどこに属するかと考えたとき、まず家族というのがあるのではないか、家族という一番身近な共同体があり、どんな家族にもそれぞれドラマがあるのではないかということを提案させていただきました。今回の企画で、地域と家族を対比させながらお父さんの人生のある瞬間をとらえることができたら、と思ったのが参加を決めたきっかけで、家族をしっかり描きたいという気持ちは強かったです。



Q:草刈さん以外のキャスティングについて、菊地さんからの意見やサジェスチョンがあったのでしょうか。たとえば、過去三作品すべてに出演している川瀬陽太さんを本作でも起用していますね。


菊地:プロデューサーの皆さんとどういう方がキャストにふさわしいのかを議論しながら決めていきました。川瀬さんは一番付き合いが古い役者さんの一人で、多くの言葉をかけなくても一言二言で伝えたいことを伝えられるやりやすい関係という点がまずあります。また川瀬さんは独特の存在感をお持ちなので、他のキャストたちとの掛け合い、たとえば草刈さんと川瀬さんが絡めば何か化学反応が起きるんじゃないかと、僕自身が毎回楽しみにしているところもあります。


 川瀬さんが出ると、ある種のおかしみのようなものが滲み出るような瞬間があり、そういったスパイス的な存在、隠し味を効かせたいところでついつい頼ってしまうというか。面白い方なので毎回ご出演していただきたいなと思っています。


Q:小松政夫さんや片桐はいりさんといった存在感のあるベテランたちの起用法も面白いですね。


菊地:こんな小さな役でオファーして失礼ではないだろうかと、ドキドキしながらダメ元でお願いしました。それぞれの役は出演シーンがごく短い役ではあるものの、登場した瞬間に印象を観客に焼きつけたいという思いがありました。小松さんや片桐さんは大ベテランですし、そこにいるだけで存在感のあるキャラクターをお持ちの俳優さんたちなので、そこに賭けてみたかった。僕の中ではそれぞれ大事な役で、そのポイントポイントが効かないと話全体が輝かないと思っていたので、引き受けていただけたら嬉しいなと、おそるおそるオファーした感じですね。


 小松さんとは、僕が助監督時代に黒沢清監督の『岸辺の旅』でご一緒していて、その時の存在感が素晴らしかった。片桐さんともこの作品の直前にキネカ大森の先付ショートムービー『もぎりさん』(全6話中の4~6話。1~3話は大九明子監督)でご一緒していて、いつか長編にも出ていただきたいなと思っていました。本作でみどりという役を作っている時に、これはもう片桐さんしかいないなと。立っている時のシルエットに観客の目が間違いなく行きますから。引き受けていただいた時点で、みどりは間違いなく魅力的な役になると確信しました。




Q:片桐さんの台詞は挨拶しかないのですが、挨拶の描写の積み重ねだけで道太郎と地域との関わりの変化が表現されています。また、パントマイムのような美しい雨のシーンでも片桐さんが効いていましたね。


菊地:今回の映画で主人公たちの住んでいる地域を客観的な視点で見ることができる存在を出したいと思い、それがみどりという役を作った一番大きな理由です。そのなかで、言葉少なくてもいろんなことを表現するという期待にしっかり応えていただきましたね。道太郎とみどりの雨のシーンでは、実はもっと寄ったサイズでも撮影していました。見比べたところ、ひいたサイズでも、草刈さんは後ろ姿で見事に心情を表現されていて、片桐さんのほうも無言のしぐさと佇まいだけで表現したいことを豊かに伝えていたので、寄りのショットはあえて使いませんでした。



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