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『ビートルジュース』と怪優マイケル・キートン【川原瑞丸のCINEMONOLOGUE Vol.21】

『ビートルジュース』と怪優マイケル・キートン【川原瑞丸のCINEMONOLOGUE Vol.21】

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猛禽怪優マイケル・キートン





 さて、久しぶりに観て改めて良さを感じたマイケル・キートン。彼は『ビートルジュース』のあと、ティム・バートンを一気にメジャー監督に押し上げた『バットマン』でタイトルロールのヒーローを演じることになるが、どちらかといえばビートルジュースはバットマンの宿敵ジョーカーに近かった。『ビートルジュース』のコメディ感や、その役どころ、あるいはキートン自身のキャリアがコメディアン発だったことなどから、キートンのバットマン役(及びブルース・ウェイン役)が発表された際にはひどいバッシングがあったというが、それが全く見当違いだったことはご存知の通り。


 バットマン役は『バットマン リターンズ』を最後に降りるが、ぼくはそのあとの出演作を全然観ていなかった(『カーズ』や『トイ・ストーリー3』などは別として)。そして、バットマン以来初めて観たのが『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』。かつてバードマンというヒーローを演じたきりヒット作に恵まれずにいる年老いた俳優の復活の物語だが、その役どころはキートン自身ともどこか重なる。ましてや、バットマン以外を全然観ていないぼくにとってはぴったり一致する。さらに『スパイダーマン:ホームカミング』では自由自在に空を飛ぶその名もヴァルチャー(ハゲタカ)というヴィランを演じたが、バットマン、バードマン、ヴァルチャーという流れが素敵ではないか。顔つきもどこか猛禽的な鋭さがあることがわかる。バットマン俳優だったキートンが再びアメコミ世界に舞い戻ったことも、ファンとしてはうれしい。


 悪役と言うとリブート版『ロボコップ』でのオムニ社CEO役も記憶に新しいが、この人のやる悪役はただの悪党に見えないのが不思議。悪い人と言うより、怖い人と言ったほうが合っている気がする。マクドナルド兄弟からマクドナルド・ハンバーガーのブランドを奪うレイ・クロックの伝記映画、『ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』でのクロック役のような、一言で善悪に割り切れない人物も印象的だ(実在の人物というのもあるが)。スパイダーマンを苦しめるヴァルチャーだって、家族や部下を食べさせるためにやむを得ず悪事に手を染めていたというところで、造形に奥行きのある悪役だったと思う。事情を抱えるゆえにモンスター化する人物が合うのかもしれない(バットマンがまさにそうだ)。いろいろな役を観てその言い知れぬ怖さを知ったあとだと、ビートルジュースのハチャメチャな狂気がより際立ってくる。



イラスト・文: 川原瑞丸

1991年生まれ。イラストレーター。雑誌や書籍の装画・挿絵のほかに映画や本のイラストコラムなど。「SPUR」(集英社)で新作映画レビュー連載中。 

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