大魔王オズの正体とは
オズの国の首都であるエメラルドの都にたどり着いたドロシーと三人のお供は、ついに大魔王オズに謁見する。緑色の巨大な顔が恐ろしい声で威圧してくるが、その正体はひとの良さそうな老紳士が操作する機械仕掛けだった。煙や光、音や炎といった効果で魔王を演出していたのである。老人はペテン師で、彼もまた気球が流されてオズの国にたどり着いたカンザスの人間であった。ドロシーは彼とともにカンザスに戻ることになるが……。
ぼくたちもまた、オズのペテンを目の当たりにしている。この映画そのものがそうだ。特殊効果によって彩られたこの映画もまた、オズの作り出した緑色の巨大な顔と同じ。そういう意味ではオズの魔法は映画の魔法でもあると言える。魔女を包み込んで消してしまう煙も、ブリキのように見えるコスチュームも、小柄で翼の生えた猿の軍団も、その正体はオズの手品と同じものだろう。作りものとわかっていても、退屈な日常を忘れてぐいぐい引き込まれる映画こそ、まさにオズの魔法だ。
その魔法は80年経ってもまだ弱まらず、それどころかどんどん強大になって数多の映画に今も受け継がれている。魅力的な世界観やキャラクターたちもさることながら、映画を観るという体験と深く結びついているからこそ、この作品が長らく愛されているのではないかなと思う。
イラスト・文:川原瑞丸
1991年生まれ。イラストレーター。雑誌や書籍の装画・挿絵のほかに映画や本のイラストコラムなど。「SPUR」(集英社)で新作映画レビュー連載中。