異様だが初代ゴジラに通じる恐怖
ヘドラを退治するために取られたのは、巨大な二枚の電極板でヘドラを挟んで電流を流すという手段。300万ボルトの電流でヘドロ状の身体を乾燥させてしまおうというわけだ。しかし、電極板の間にヘドラをおびき出したものの、電線の故障でなかなかうまくいかない。とうとう見かねた(?)ゴジラが電極板に放射熱線を吹きかけることで電撃を起こし、ようやくヘドラにダメージを与えることに成功する(どうしてゴジラが自衛隊が設置した装置の仕組みや作戦を理解しているのかは、気にしちゃいけない)。
体表が乾燥してボロボロになるも、それを突き破って飛行形態で逃げ出したヘドラ。そこで、ゴジラは地面に向かって熱線を吐き、その噴射によって後ろ向きの姿勢で飛行する。空を飛ぶゴジラの衝撃的な姿に「そんなバカな」と言いたくなるが、突っ込む暇もなくゴジラはヘドラに追いつき、捕まえて電極板まで連れ戻してしまう。再び電流を浴びせられるヘドラ。今度はゴジラも念入りに、乾燥したヘドラの中に腕を突っ込んでその中身を引っ張り出していく。とにかく念入りに、執念深く、バラバラにして足で踏んづけて破壊していく。冗長にも見えるかもしれないが、ゴジラの怒り、公害への憎悪が伝わってくる気もする。
仕上げにもう一度電撃を起こし、ヘドラの残骸が完全に乾燥しきってボロボロになる。どうしてゴジラが電極板の間にいて無事なのかはよくわからないが、ともかくヘドラは葬られ、怪獣王はその場を立ち去る。もちろん戦いを見守っていた人間たちをひと睨みするのを忘れずに。ゴジラにとってはヘドラも人類も大して変わらないはずだ。おもしろいポーズで空を飛んだりはしたが、その眼光は鋭く釘を刺してくる。ゴジラ自身も元はと言えば人類による核実験で目覚めた身。確かに作品全体には異様な(あるいはちょっと抜けた)雰囲気が漂うが、人類への怒りを表す怪獣としては、初代としっかり繋がっていると思うし、その時代ごとの恐怖を体現する怪獣には意義がある。そうして、ヘドラの恐怖は決して過去のものではないというのも、ずっしり来るものがある。ゴジラの睨み顔と同じように、ヘドラの怪しく光る赤い眼もまた、なにかを見つめているような気がしてくる。
イラスト・文:川原瑞丸
1991年生まれ。イラストレーター。雑誌や書籍の装画・挿絵のほかに映画や本のイラストコラムなど。「SPUR」(集英社)で新作映画レビュー連載中。